研究課題
本研究は、経強膜マルチドラッグデリバリーシステム(経強膜DDS)を実用化するための研究である。これまで明らかになった課題を解決し臨床研究への足掛かりとする。複雑な病態を辿る網膜疾患に対しては、複数の薬剤投与による網膜神経保護が有効である。また、経強膜DDSが強膜上に密着して薬剤が網膜へ確実に届くことが重要である。H28はデバイス周囲のFibrosis抑制と強膜への密着を高める試みとして、免疫抑制剤シクロスポリンAの徐放システムの構築を試みた。徐放システムとして、ゼラチンとキトサンの混合水溶液に水溶性カルボジイミドを添加して架橋するインジェクタブルゲルを開発した。ゼラチンとキトサン、および水溶性カルボジイミドの混合比を最適化し、シクロスポリンAのIn vitro徐放性を確認した。Fibrosis抑制効果については現在も検討中であるが、シクロスポリンAをマルチ徐放することによって、ラット眼強膜上埋植試験では蛍光組織の網膜移行が促進される結果を得た。一方、ウサギ用のシングル薬剤徐放デバイスを用いて網膜変性トランスジェニックウサギに対する44週間の埋植試験を行った結果、網膜電図による網膜機能検査と光干渉断層計による網膜組織像解析および眼圧測定やIn situハイブリダイゼーションとRT-PCRによる遺伝子発現解析によって、プラセボデバイス埋植群や未処置群と比較して埋植後32週間まで有意な網膜保護効果を認めた。
2: おおむね順調に進展している
Fibrosisおよび強膜密着性を改善する方法として、シクロスポリンAのインジェクタブル徐放システムを新規に開発することができ、その効果についてはまだ検討中であるが、一部の結果から網膜移行性が改善されることを確認しているため、順調に推移している。また、網膜変性モデル動物を使った試験で、薬物徐放デバイスの網膜保護効果のエビデンスを得ることができた。
シクロスポリンAの徐放システムの改良とFibrosis抑制効果、および豪体としての強膜密着促進性をウサギ等の動物で確認をしていく。効果が弱い場合は、ゼラチン、キトサン、架橋剤の組成を最適化し、投与方法も改良していく。また、デバイス基材に柔軟性の高いシリコーンとステンレスシートまたはステンレスワイヤーを組み込むことによって形状記憶性を持たせて、どのような曲面を持つ眼球に対しても強膜密着性を持たせることができるデバイスデザインを検討する。このマルチ徐放デバイスが完成したら、網膜変性動物への網膜保護効果を従来のシングル薬物徐放デバイスと比較する。
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Investigative Ophthalmology & Visual Science
巻: 57(15) ページ: 6527-6538
10.1167/iovs.16-20453
Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials
巻: in press ページ: in press
10.1002/jbm.b.33887