研究課題/領域番号 |
15H03020
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中澤 靖元 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20456255)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 組織工学 / 心臓弁 / シルクフィブロイン |
研究実績の概要 |
本年度は、シルクフィブロインを基盤とした、再生型心臓弁の作製条件の検討を中心に行った。シルクフィブロインへの修飾として、細胞外マトリックスの一種である、エラスチン分子を固定化する手法について確立すると共に、血管内皮細胞の早期接着および、抗血栓性が期待できるヘパリンの固定化についても定量的な固定化を行う事ができた。 エラスチン分子の固定化に関しては、シルクフィブロインへの反応濃度依存的なエラスチンの固定化量の制御を行う事ができた。得られたエラスチン固定化シルクフィブロインは、力学物性や平滑筋細胞増殖における至適値が存在することも明らかとなった。 ヘパリン固定化シルクフィブロインについては、エラスチン固定化同様、シルクフィブロインのチロシン残基にヘパリンを修飾する反応がヘパリンの反応濃度依存的に進行した。 得られたヘパリン固定化シルクフィブロインの構造については、シルクフィブロインの凝集構造をヘパリンが阻害することなく、力学物性の高いフィルム形状を維持することが可能であった。さらに特筆すべきは、ヘパリン固定化シルクフィブロインフィルムは、水に浸漬することで、最大で自重量の 6 倍の含水性を有しており、含水した ヘパリン固定化シルクフィブロインフィルムは未処理のシルクフィブロインフィルム と比較して、柔軟性および内皮細胞の接着性が向上することが明らかとなった。 以上より今年度は、エラスチンおよびヘパリンをシルクフィブロインへ固定化することに成功した。また、それぞれの分子は、反応濃度依存的な固定化量を示すことが明らかとなった。これらの材料は、埋植後の内皮細胞の接着および増殖を促進することにより、心臓弁再生の促進が期待される。次年度より本格的な動物実験を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は初年度に2種のサブテーマを設定し、研究を実行した。 研究課題Ⅰと設定した「シルク基盤心臓弁の作製条件」に関しては、エレクトロスピニング法による弁膜作製を最も有力な作製法と設定し、条件の最適化を行った。本検討については、次年度以降についても継続的に実施する予定としている。 また、研究課題Ⅱとして設定した、「シルクフィブロインへの機能性分子固定化」に関しては、細胞外マトリックスの構成成分であるエラスチンのみならず、抗血栓性、内皮細胞接着・増殖に関わるとされているヘパリンの固定化にも成功したことは想定を上回る成果である。 以上より、研究課題全体を通して概ね順調な研究推進状況であると考えている。しかしながら、研究課題Ⅰの「NMR法による劣化解析」については、論文投稿は行ったものの、検討条件を精査するための実験のみに留まり、想定より若干の遅れが生じている。次年度から本格的なシルクフィブロインへの劣化解析を行う予定である。なお研究成果の関連論文の投稿については、現在3報を作製中であり、次年度早期の投稿完了を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、シルク基盤再生型人工心臓弁を継続的に実施する。心臓弁に最適な物性値を具体的に定めるとともに,拍動下における耐久性を評価するためのモデル流路を作製し、人工心臓弁の加速劣化試験を行う。拍動下での弁膜の物性変化や構造変化の詳細を経時的に追跡する。 研究計画にあった、損失水頭、弁圧格差などによる劣化原因探索のための弁膜の流体特性解析については、予算の関係上、モデル流路での検証を主として行い、シミュレーションについては必要に応じて委託などにより対応することとする。以上を総合的に検証し、人工心臓弁の経時的な分解特性と物性変化を定量的に把握する。 また、イヌの弁置換術については、今後具体的な検討を行うが、研究計画に記載したヒツジの弁置換術については、非常に高額であるため、実施の是非を十分に検討する。 以上のように、軽微な研究計画の変更はあるものの、全体的な研究推進方策については問題ない。
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