研究課題
最終年度である平成29年度は、前年度に引き続き、再生型心臓弁の作製条件について条件検討を実施した。緩やかな分解性を有するシルクフィブロイン(SF)と生体吸収性ポリマーで柔軟性に富んだカーボネート系合成高分子(PC)を混合し、組織再生と生体吸収性を併せ持った組織工学材料の作製を試みた。さらに、分解過程での微細構造への影響を評価することで,材料全体の物性と相関付けることで,分解性の制御への知見獲得を実施した。重量比SF:PC=100:0(SF100)、70:30(SF70PC30)、50:50(SF50PC50)の混合シートをエレクトロスピニング法により作製し、形態観察,物性解析、さらにリパーゼによる37 ℃での酵素分解試験を実施した。得られたシートは、ナノオーダー繊維を形成し、PCの濃度依存的な弾性率の低下が確認され、またSFの強度についてはほぼ維持されていた。SF50PC50については、ヒツジ肺動脈壁への埋植試験の結果、シート表面にコラーゲンやエラスチン等の発現が認めらたが、分解性については、想定を下回る結果となった。そこで経時的な分解過程におけるシートデバイスの物性・構造変化について詳細に検討すべく、酵素による加速劣化解析を実施した。その結果、SFとPCの混合比により分解結果に相違が現れた。特にSF50PC50では、分解過程で粘弾性成分が低下するとともに、分解初期より分子運動性の高いドメインが出現し、経時的にその存在比が増大することが、パルスNMR法による解析で明らかとなった。以上本研究により作成したSF/PC複合化シートは自己組織の再生が期待され,また心臓の拍動に3ヶ月間耐えうる強度を保持することが示された。今後ヒツジ肺動脈弁等への置換実験を継続的に行うことで、実用化に耐えうる素材の提案を目指す。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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