研究課題
平成28年度は(一部平成29年度に繰越後に終了)、ヒト ES/iPS 細胞の自己複製に関与するシグナル経路を制御可能と考えられる化合物の収集とスクリーニングを行った。平成27年度に実施した網羅的遺伝子発現の比較解析とパスウェイ解析、ネットワーク解析、代謝解析からヒトES/iPS細胞の自己複製のハブと考えられるシグナル経路群ならびに代謝経路を制御可能な阻害剤等の化合物、特定のアミノ酸や脂質等を収集した。これら計50種以上の候補物質を、様々な濃度で未分化性を維持したまま増殖可能であるか、複数のES細胞株とiPS細胞株を用いて検討した。その結果、少なくとも5種の化合物、数種のアミノ酸、2種の脂肪酸で強い増殖促進効果を見出した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度では、平成27年度に生じた実験補助員および連携研究員の離脱の影響が残り、若干の遅延をもってスタートした。平成28年度の予定していた研究は全て遂行できたものの、、この遅延をほぼ無くすことが出来た。しかし予想外に、化合物の効果が細胞株間で違うことが分かり、結論を出すことに時間がかかったため、一部平成29年度に持ち越すこととなった。
平成27年度にはRNAseqによる網羅的遺伝子発現解析とパスウェイ解析、ネットワーク解析および代謝解析を行い、平成28年度には化合物の収集とスクリーニングをおこなった。これらによって、ヒトES/iPS細胞の自己複製に関与するシグナル経路と、これを制御可能な化合物の同定を実施した。平成29年度は、これらの得られた知見を基に、以下の研究を行う。1. 新規培地の開発平成28年度に得られたヒット化合物とこれまで得ていた化合物の組合せとその濃度調整によって、より汎用性が高く増殖の良い培地の開発を行う。組合せスクリーニングにはアルカリ性ホスファターゼの発現と細胞増殖を指標に1次スクリーニングを行い、未分化・分化マーカー分子発現を指標に2次スクリーニングを行う。これらで良い培地については、更に複数細胞株で長期維持や分化能、核型の検定を行い、新規培地を開発する。2. 新規合成培養システムのプロトタイプ開発とテスト1で開発した培地と、開発済みのナノファイバーやポリマーによる培養法を組合せ、新規培養システムのプロトタイプを開発し、DNA非挿入のエピゾーマルベクターを用いた血球と線維芽細胞からのiPS細胞作製の効率や、長期培養での増殖性、未分化性(未分化マーカーの発現解析)、分化能(EB形成やテラトーマ形成)、核型解析等の安定性のテストを行う。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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