平成27年度のヒトES/iPS細胞の網羅的遺伝子発現解析と代謝解析による自己複製に関与するシグナル経路の解析、平成28年度のスクリーニングによる自己複製シグナル経路を制御する低分子化合物の同定に続き、平成29年度は、低分子化合物を用いた新規のヒト ES/iPS 細胞用合成培養システムの開発を行った。 同定した複数の化合物を様々濃度で組み合わせ、複数のヒトES/iPS細胞株を用い、その増殖と未分化性維持を指標に培地を開発した。その後、この倍地と様々な細胞外基質やポリマーによる細胞の接着性の検討や、様々な非タンパク質による継代溶液・方法の検討を、培地の更なる最適化と共に実施し、新規の培養システムを開発した。 開発した培養システムを用いて、長期培養での増殖や未分化マーカー発現解析、分化誘導による分化能、ゲノムの安定性、網羅的な遺伝子発現解析等について、他の培地と比較しながら解析・確認した。また、線維芽細胞と血球細胞を用いてiPS細胞の作製にも開発した培地が他の倍地と遜色なく使用可能であることも確認した。 これらによって、世界で最もタンパク質成分が少なく、材料費が安価な合成培養システムが完成したので、これを論文発表した。
|