研究課題/領域番号 |
15H03027
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
陳 国平 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (50357505)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マトリックス材料 / 生体模倣材料 / 足場材料 / 再生医療 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ヒト間葉系幹細胞(MSC)の骨芽細胞・脂肪細胞への同時分化誘導、分化段階の評価、脱細胞処理によるマトリックスの調製を実施した。まず、MSCの同時分化誘導を行うため、骨・脂肪各分化誘導培地を種々の割合(100/0~0/100)で混合した。また、分化誘導因子未添加の培地を幹細胞培地とした。次に、MSCを細胞培養皿に播き、上記の混合培地で7~21日間培養することで同時分化誘導を行った。続いて、アルカリホスファターゼ(ALP)染色、アリザリンレッド(ARS)染色によるカルシウム沈着の検出、Oil Red O 染色による脂肪滴の検出、リアルタイムPCR 法による分化マーカー遺伝子の発現解析を行った。その結果、幹細胞培地で7日間培養したMSCはALP、ARS、Oil Red O 染色ともに陰性で骨、脂肪分化の遺伝子は検出されず、未分化の細胞とした。85/15混合培地で7日間培養したMSCはALP染色陽性、ARS、Oil Red O 染色が陰性のため、骨分化初期・脂肪分化初期細胞とした。同様にして、50/50混合培地で14日間培養したMSCを骨分化初期・脂肪分化後期細胞、95/5混合培地で21日間培養したMSCを骨分化後期・脂肪分化初期細胞、70/30混合培地で21日間培養したMSCを骨分化後期・脂肪分化後期細胞とした。各分化マーカー遺伝子の発現量は、染色結果と一致していた。さらに、界面活性剤、酵素、アルカリ処理によりこれらの5種類の培養系から細胞成分を除去することで、各マトリックスを作製した。細胞成分の除去は細胞核、細胞骨格アクチンの染色により確認した。基板へのマトリックスタンパク質沈着はクマシーブリリアントブルー染色で確認した。さらに、上記マトリックスをタイプIコラーゲン、ビグリカン等の抗体で免疫染色した結果、各分化段階でマトリックスの組成が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト間葉系幹細胞を骨分化誘導培地と脂肪分化誘導培地の混合培地で培養時間を調整することにより、骨分化と脂肪分化のそれぞれの初期段階と後期段階を制御する方法を確立した。分化を誘導した細胞を脱細胞化することにより、骨・脂肪組織発生模倣型マトリックスの作製に成功し、その組成を明らかにした。以上のように、当初の計画通りに研究成果を上げることができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通りに研究を進める。すなわち、平成27年度に作製した骨・脂肪組織発生模倣型マトリックスを用いてヒト間葉系幹細胞を培養し、マトリクスによる骨分化と脂肪分化への効果を調べる。
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