研究課題/領域番号 |
15H03036
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
山岡 禎久 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80405274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光音響顕微鏡 / 非線形光学 / 2光子吸収 / 液体レンズ |
研究実績の概要 |
光音響イメージングは生体組織において高コントラストで深部構造を視覚化する有望な技術の1つである。我々は、空間分解能を向上させるために、2光子吸収と光音響顕微鏡(Photoacoustic Microscopy: PAM)を組み合わせた2光子光音響顕微鏡(Two-photon PAM: TP-PAM)を開発してきた。 2光子吸収は小さな集光点でのみ起こるため、TP-PAMでは光学的に決定された高空間分解能を有した生体の可視化が可能である。TP-PAMの空間分解能は2光子吸収の起こる微小空間の体積で決定され、従来のPAMとは異なり、生体組織を長距離伝搬させることができない光音響信号の高周波成分を検出する必要ない。従って、生体深部観察に有利な光音響信号の低周波数成分を利用しながら、空間分解能を向上させることができる。 しかしながら、TP-PAMは解決すべき重要な問題が存在する。従来のPAMでは断面構造を取得するために1次元スキャンのみをすればよいが、TP-PAMでは、焦点スポットの2次元スキャンが必要であるため、断面構造を視覚化するのに時間がかかるという問題があった。その問題を解決するために、TP-PAMに電気的に制御された焦点可変液体レンズを使用することを提案した。焦点距離を電気的に制御可能な液体レンズは、高速な応答時間、低コスト、自由な光学設計が可能であるという利点があり、TP-PAMの高性能化に有効である。今年度は、この液体レンズを用いたTP-PAMをさらに高性能にするため、試料走査型であったものをヘッド走査型に変更し、生体観察により適した装置の試作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2光子光音響顕微鏡の問題点である画像取得時間が長いという問題点を解決するために、焦点可変液体レンズを用いた光音響顕微鏡装置を開発し、従来法に比べて、20倍の速度向上を示した。今年度は、今までの試料走査型の装置から、ヘッドスキャン型の装置として改良を加え、生体観察に適した装置を試作することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は生体深部観察に問題となる波面収差の影響を取り除くため、液晶光学素子を用いることによる光音響顕微鏡の改良を行う予定である。そのことにより、生体深部における高空間分解能化、高コントラスト化が可能となり、医療において必要な情報を得ることができるようになると考えている。
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