研究課題/領域番号 |
15H03042
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
河上 敬介 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (60195047)
|
研究分担者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (10093428)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 筋萎縮 / 理学療法 / 筋衛星細胞 / 筋肥大 |
研究実績の概要 |
正常筋の肥大に要するトレーニング期間が8-16週間もかかるのに対して、筋萎縮動物モデルにオペラント学習による立ち上がり運動を行わせると、わずか7日間で正常筋の太さ(萎縮時の2倍の太さ)まで回復する。即ち、萎縮筋の太さの可塑的変化は異常に早い現象である。本研究の大きな目的の一つは、この違いが起こるメカニズムの一端を明らかにすることである。 そこで、今年度はまず、筋萎縮の動物モデルを用いて、運動開始早期に起こる筋衛星細胞の活性化のメカニズムの検証を行った。その結果、筋萎縮動物モデルにのみに起こる、筋線維内核数の増加が判明した。この筋線維内核数の増加には、筋衛星細胞の分化や増殖が大きく関与することが示唆された。この現象とともに、健常筋に無い速さでの筋線維の太さの増加が起こり、そのメカニズムには、この核数の増加の関与がうかがわれた。 次に、筋萎縮培養モデルを用いた、適切な運動の検証を行った。具体的には、萎縮筋に対する収縮運動を実施する上で、適切な強度や運動時間、インターバルを明らかにする実験を行った。実験は、主にマウスの筋衛星細胞から作製した筋管細胞を用いて、筋萎縮培養モデルを作製し、このモデルに電気刺激による収縮運動を行わせることによりにより行った。評価は、主に筋管細胞の横径の変化を組織学的に検証することと、これまでに明らかになった、蛋白質合成の促進や分解の抑制に関わるシグナル変化とによって行った。その結果、適切な運動強度や時間がほぼ明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた、動物を用いた実験と培養細胞を用いた実験とが、ほぼ予定通り実施でき、29年度の実験のための、評価すべき着眼点が明らかになってきているため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施してきた、培養細胞を用いた検証を引き続き実施していくとともに、その情報をもとにした実験動物を用いた実験系を精力的に進める。特に、理学療法にとって興味深い、萎縮からの回復促進に最適な運動時間、インターバルについて深めていく予定である。また、萎縮から回復に不可欠な代謝系の回復促進という視点から、末梢血管やリンパ管系の回復促進効果に関する現象的情報も必要と考えられる。しかし、筋内脈管系の変化についてはほとんど不明である、それらの情報も併せて検証する予定である。
|