正常筋の肥大に要するトレーニング期間が8-16週間もかかるのに対して、筋萎縮動物モデルにオペラント学習による立ち上がり運動を行わせると、わずか7日間で正常筋の太さ(萎縮時の2倍の太さ)まで回復する。即ち、萎縮筋の太さの可塑的変化は異常に速い現象である。本研究の大きな目的の一つは、この違いが起こるメカニズムの一端を明らかにすることである。これまで、筋萎縮の動物モデルを用いて、運動開始早期に起こる筋衛星細胞の活性化について検証した。さらに、筋萎縮培養モデルを用いて、適切な強度や運動時間、インターバルの検証を行った。 これらの検証により明らかになった運動負荷方法を基に、再度実験動物を用いて筋萎縮からの回復促進に対して、適切な強度や運動時間、インターバルの検証を以下のような視点から行った。①収縮刺激早期に起こる一過性の蛋白質合成の活性と、収縮運動停止初期に起こる、タンパク質合成の促進や分解の抑制に関わるシグナル変化を解析した。②筋線維横断面積、筋線維核数、筋サテライト細胞の活性化等を、組織学的に解析した。③筋衛星細胞の活性を生化学的に解析した。④足関節トルクを解析した。 その結果、筋萎縮からの回復促進に対して、健常筋と同等の強度(最大筋力の80%程度の強度)のトレーニングを行うと、筋線維の損傷が起こることが判明した。また、損傷が起こる強度よりも弱い負荷強度の方が、筋萎縮からの回復促進効果があることも判明した。
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