研究課題/領域番号 |
15H03048
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
赤居 正美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所, 顧問 (80143452)
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研究分担者 |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(併任研究所) 障害者健康増進・運動医科学支援センター, センター長 (00392192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性炎症 / 二次障害 / 耐糖能異常 |
研究実績の概要 |
前年度に、マウスの脊髄損傷肥満モデルを作成するために、脊髄圧挫損傷モデルを作成し12週後まで高脂肪食負荷行ったが、通常食のコントロールと比較して十分な肥満が得られなかった。改めて損傷の重症度を調節し、マウスの脊髄損傷モデルで更なる肥満の誘導が可能かを検討したが、困難であった。ただし、体重増加は認められなかったが、脊髄損傷群では高脂肪食負荷したコントロール群に比べて顕著に耐糖能が悪化していた。このことはマウス脊髄損傷モデルにおいては麻痺による糖代謝異常が生じているものの、モデルが不全麻痺で下肢の動きが残存しているために活動量が維持され、体重増加に至らなかったためと考察した。 そこで後肢を完全に不動化する神経損傷モデルとして、坐骨神経および大腿神経の両側切離モデルを作成し評価した。その結果、後肢の萎縮は脊髄損傷群に比べて顕著だったにもかかわらず、耐糖能の悪化は認められなかった。これらの結果は脊髄損傷による糖代謝異常が筋肉の麻痺によるだけでなく、脊髄の神経機能の直接の影響を受けている可能性も示唆している。今後、これらの基盤のなるメカニズムを解明していく予定である。 一方、ヒト研究については予定通り脊髄損傷者の慢性期症例で肥満を呈するケースに対して、下肢の受動運動を実施する研究フィールドを確立することができた。症例の中には糖代謝異常を示す症例も多く、今後麻痺筋への受動運動による効果を観察しながら、その血液データの収集を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスでは内臓脂肪が増加している、肥満の脊髄損傷モデルを作成することは困難であったが、脊髄損傷により耐糖能がさらに悪化すること、下肢筋の萎縮は耐糖能には顕著に寄与しないことが明らかとなる等、本研究の方向性を再検討するための重要な知見が得られた。内臓脂肪、筋肉等それぞれの解析系も確立しており、今後の研究の加速が期待される。ヒトを用いた研究においては、患者での調査が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画とは異なる知見を得たが、各組織の生化学的な解析方法は共通するものであり、確立した解析系を利用可能であることから、引き続き今後も解析を継続する予定である。更なる解析の加速のために、実験助手などのマンパワーをさらに有効に活用する。
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