本年度の研究の実績は以下のとおりである。 (1)臨床評価用グローブシステムの複製:昨年度は臨床評価試験用グローブシステム1式を完成し、臨床評価試験開始の準備が整った。複数の医療機関での試験実施を可能とすべく、臨床評価用グローブシステムをもう1台製作した。また、多様な体型の被験者に対応可能とするために、グローブはMとLの2種類のサイズを右手用と左手用にそれぞれ用意し、1台につき計4種類のグローブを利用可能とした。 (2)臨床評価試験の実施:長崎市の三原台病院において片麻痺を有する被験者1名に装置を適用し臨床評価試験を開始した。被験者は14ヶ月前に脳梗塞を発症し、左片麻痺を患った60代男性である。装置による介入を2週間実施し、その間被験者は毎日、装置による全指伸展動作10分間、ピンチ動作10分間の合計20分間のリハビリ訓練を行った。本試験はパイロットスタディとしてシングルケーススタディのABデザインを採用し、介入前の15日間と介入期間の15日間、計30日間に渡り、5日おきに上肢機能評価を実施した。データの解析は2-standard deviation (SD) band分析に基づいて行った。また、上肢機能評価には、Box&Block Test(BBT)、Action Research arm Test(ARAT)、脳卒中片麻痺10秒テストのFinger Individual Movement Test (FIMT)、Hand Pronation and Supination Test (HPST)、Finger Tapping Test (FTT)を用いた。結果としてはHPST以外のテストで本装置による訓練の効果が確認された。HPSTは前腕の回内外運動に関するものであり、指に関する評価試験の全てでリハビリ効果が認められたことから、本装置の上肢機能回復に対する一定の効果が確認された。
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