1990年代以降、主要な心の科学(心理学、認知科学、神経科学など)では「身体性(embodiment)」の重要性が広く認識されるようになり、「身体性認知」と呼ばれる新たなパラダイムも成立した。本研究は、このパラダイムをさらに推進し、「心の科学」にとどまらず、心身全体を射程とする「人間科学」を構想することを目的としたものである。研究期間中は、以下の二点を理論的に解明することを試みた。 (1)われわれが無自覚に遂行するスキルフルな身体行為に基礎づけられて成立している「自己」、(2)非言語的コミュニケーションも含め、自己と他者のあいだで展開される相互作用にもとづく「社会的認知」および「他者理解」。
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