研究課題/領域番号 |
15H03070
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小池 関也 筑波大学, 体育系, 准教授 (50272670)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スポーツ動作 / 出力発揮様式 / 動力学的貢献 / 加速メカニズム / 運動方程式 |
研究実績の概要 |
まず,野球打撃動作の分析では,全身とバットからなる計16セグメントの剛体リンクモデルを対象として,その運動方程式の有する入出力間の因果関係に基づく分析を行い,打撃動作の重要な評価量であるバットヘッドスピードの生成に対して,上肢関節トルクとともに累積的な効果が直接現れるトルソ関節(上胴と下胴を結ぶ仮想関節)について,その回旋軸トルクの作用メカニズムの定量化手法を考案し,分析を行った.その結果,この回旋軸トルクを作用させるためには,1.下肢関節トルクによる貢献が非常に大きく,下胴の慣性力項および上肢関節トルクによる貢献は小さいこと,および 2.両側の股関節屈曲伸展軸トルクが主に貢献しており,軸脚側の股関節内外転軸トルクは負に寄与していたこと,などを定量的に明らかにした.ここで,飛来球打撃実験については,センサーバットにおいて,飛来球の打撃によって生じる大きな衝撃力を緩和するための装置を設けたセンサーバットを用いて,飛来球打撃実験を安定に実現することを可能とした.これによる飛来球打撃実験の分析の結果,飛来球打撃においても,ティー打撃と同様に,ノブ側の肩関節各軸およびトルソ関節軸トルクなどの累積的な効果によってバットヘッドスピードを獲得していることがわかった.なお,この緩衝装置については,その軽量化が課題として挙げられる. 次に,野球投球動作の分析では,ボールのスピードとともに回転を作用させる部位である手指を含む各関節の動力学的な貢献の分析を可能とするために,手指モデルの検討およびボールの回転を含めた生成メカニズムに必要となる力学手的モデル化の対処法について予備的な検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
野球打撃動作については,分析手法の拡張を進め,ヘッドスピード獲得に対する全身の関節トルクの直接的な貢献だけでなく間接的な貢献をも定量化できるようにした.また,衝撃緩和装置および緩衝材を備えたセンサーバットとピッチングマシンにより,飛来球打撃を安定に行うことを実現している.なお,筋腱複合体分析については,別予算で導入した市販ソフトウェアが利用可能となったため,これを用いて筋張力の貢献の定量化についての準備を行っている. 平成29年度の予定課題である野球投球動作の分析については,投球動作の課題であるボールスピード獲得とボールスピン量の生成メカニズムを同時に考慮できるように予備的な検討を進め,手指モデルおよびボール作用力の手指への分配モデルについての検討から,ストレート球の投球動作に対する全身の分析を実行可能な方法を考案している.
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今後の研究の推進方策 |
スプリント走および野球打撃動作については,関節トルクレベルでの分析を実現しているため,今後は,筋骨格モデリングソフトウェアを利用して,筋張力の動力学的な貢献の定量化を進める.その際,走動作において貢献が大きな足関節トルクを生成している筋群については,アキレス腱の弾性を考慮したモデル化を行うために,弾性要素の貢献の内訳を考慮可能とするためにシステムの拡大系による分析を試みる.また,飛来球打撃用センサーバットについては,より軽量なバットとするために衝撃緩和装置の軽量化を行う. 野球の投球動作については,平成28年度に予備的に検討を行った手指のモデル化とボールの並進・回転運動への動力学的貢献の手法を全身に拡張して,身体関節トルクの貢献を定量化可能とするとともに,その累積的な効果を考慮した分析により,パフォーマンスに対する各トルクおよび各筋の動力学的貢献を定量化する.
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