研究課題/領域番号 |
15H03090
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
清水 英寿 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (10547532)
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研究分担者 |
萩尾 真人 東洋大学, 生命科学部, 助教 (00623927)
吹谷 智 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10370157)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スカトール / 胆汁酸代謝 / 二次胆汁酸 / デオキシコール酸 / 動物性タンパク質摂取過多 / 炎症性腸疾患 / 大腸ガン / インドール |
研究実績の概要 |
近年、我が国では、生活習慣病の増加が深刻な問題となっている。その原因の1つとして、食生活の欧米化に伴う動物性タンパク質の摂取過多が挙げられている。このような食習慣は、腸内への胆汁酸流入量を増大させ、我が国でも増加している大腸ガンや炎症性腸疾患の発症・進展の危険因子の1つとされている。しかし、動物性タンパク質の摂取過多による胆汁酸代謝異常が、どのような過程を経て導かれているのか明らかとなっていない。そこで本申請では、動物性タンパク質摂取過多による食品中のトリプトファンから腸内で生成されたスカトールが起点となり、腸内細菌叢の変動及び胆汁酸代謝を含む腸管・肝臓機能に影響を与え、大腸ガンや炎症性腸疾患を含む生活習慣病の発症・進展に寄与しているという仮説を立てた。 得られた成果として、スカトール摂取ラット群において、糞中二次胆汁酸量は増加し、特にその中でも、大腸ガンや炎症性腸疾患の原因とされているデオキシコール酸濃度が有意に上昇していた。加えて、糞中インドール量が、スカトール摂取ラット群で有意に増加していた。インドール産生菌は胆汁酸に対して耐性能が高い事から、この結果は、スカトール摂取ラット群の腸内において、インドール産生菌が増加している事を示唆している。また、回腸におけるPPARgammaの発現量が、スカトール摂取ラット群で有意に低下していた。この現象は、炎症性腸疾患で観察される状態と類似している。以上から、動物性タンパク質摂取過多による腸内スカトール量の上昇が、胆汁酸代謝異常を引き起こし、また腸内細菌叢を変化させ、大腸ガンや炎症性腸疾患の起因となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属変更に伴う新しい研究環境の立ち上げのため、進捗状況として、やや遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
(I)胆汁酸代謝及び腸管・肝臓の機能にスカトールが与える影響 昨年度との変更点として、本飼育機関を4週間から6週間にする。その他は、同様の解析を行う。 (II)腸管・肝細胞を用いたスカトールの解析 Caco-2細胞およびHepG2細胞を用いて、スカトールが影響を与える細胞内シグナル伝達経路及び転写因子ネットワークを明らかにしていく。
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