研究課題/領域番号 |
15H03090
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
清水 英寿 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (10547532)
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研究分担者 |
萩尾 真人 東洋大学, 生命科学部, 助教 (00623927)
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10370157)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / デオキシコール酸 / インドール系化合物 / スカトール / インドキシル硫酸 / AHRR / 腸内細菌 / Bacteroidetes |
研究実績の概要 |
昨年度は4週間の飼育期間でラットの解析を行ったが、本年度は6週間の飼育期間でスカトールが及ぼす影響について解析を行った。その結果、以下の結果を得た。 (1)摂食量及び体重に変化はなかった。(2)肝臓、腎臓、脂肪重量に、違いはなかった。(3)AST及びALT、血中コレステロール値及びトリアシルグリセロール値、血中アディポネクチン値に有意な差は観察されなかった。(4)糞中の総胆汁酸濃度、二次胆汁酸濃度、デオキシコール酸及びその関連胆汁酸濃度について、試験開始2週間後からスカトール摂取群で有意な上昇が見られ、試験開始4週間後及び6週間後でも結果は同様であった。(5)盲腸内のBacteroidetesが、スカトール摂取群で有意に低下していた。 我々のグループの解析では、消化管内での胆汁酸、特にデオキシコール酸がBacteroidetesの減少に影響を与えている事を明らかにしている。そのため、スカトール摂取を起因とした胆汁酸代謝の亢進によって腸内におけるデオキシコール酸濃度が上昇し、その結果として、Bacteroidetesが減少したと考えられる。 スカトールが培養腸管細胞に与える影響についても解析を行った。結果として、スカトールが腸管細胞の細胞死を導く事が明らかとなった。そこで、スカトールの受容体として報告されているダイオキシン受容体との関係について調べたところ、スカトールによる細胞死にダイオキシン受容体は関与しない事が確認された。 また、スカトールと同じインドール系化合物であるインドキシル硫酸からダイオキシン受容体を介して発現誘導されるAHRRについて、腎機能との関連をAHRRSNPsの視点から解析を行った。その結果、AHRRの腎機能に影響を与える事が明らかとなった。よって、ダイオキシン受容体のリガンドであるインドール系化合物は、腎機能に影響を与える事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スカトールがラット個体に及ぼす影響について、おおむね解析を行う事が出来た。また,培養腸管細胞や培養肝細胞を用いた解析について、おおむね順調に解析を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、次の内容について解析を進めていく。(1)過去2年間の解析では、エサに抗酸化剤を含有させていた他が、本年度では抗酸化剤の除いたAIN93Gを基本食としたスカトール摂取試験を行い、ラット個体に対する影響について解析を行う。(2)腸管細胞に対するスカトールの作用及びその機序について、培養腸管細胞を用いて解析を行う。(3)肝細胞に対するスカトールの作用及びその機序について、培養肝細胞を用いて解析を行う。
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