研究課題/領域番号 |
15H03101
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
宮本 忠吉 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (40294136)
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研究分担者 |
川田 徹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30243752)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性心不全 / ラット / 運動 / 換気量 / 呼吸調節 / 循環調節 / システム解析 / 化学受容器反射 |
研究実績の概要 |
慢性心不全モデルラットの運動時に発症する呼吸異常を精度よく定量的に検出するための方法論の基礎を確立することを目的として、慢性心不全及び正常モデルラットに対して自発呼吸麻酔下での下肢電気刺激を用いた運動負荷実験を行なった。また、安静及び運動時の呼吸調節系のシステム機能特性を定量解析する方法論(システム同定法)を構築し、その運動時制御機構を定量解析する実験システムの開発を行った。 12~20週齢SDラットを対象に、αクロラロース及びウレタンを腹腔内投与し、麻酔下で実験を行った。呼気流量及び呼気ガス濃度、血圧、心拍数の連続記録を行い、同時に筋肉への電気刺激を通じて代謝量を増大させる条件にて呼吸・循環調節系の時系列定量解析を行った。生体への入力刺激として、吸入気ガス濃度を変化させて、動脈血中のO2、CO2及び血圧をそれぞれ変化させ、その効果器応答を平衡線図や伝達関数を用いて解析評価し、負帰還系全体のダイナミクスの定量評価を行った。 その結果、運動時の分時換気量(VE),酸素摂取量、心拍数、血圧は刺激強度依存性の増加を示し(P<0.01)、慢性心不全モデルラットではVEの過剰亢進が認められ浅速型呼吸を伴う呼吸様式が認められた。それぞれの強度条件にて、CO2負荷を行い、呼吸調節の中枢機能特性を直線近似にて同定したところ、CO2に対する学感受性は変化せず、強度依存性のシステム特性の上方シフトが生じ、慢性心不全モデルでは正常よりもさらに上方へのシフトが生じた。 以上の結果は、ヒト運動時の変化とほぼ同様の結果を示すことから、自発呼吸麻酔下モデルラットによるプログラム通電刺激を用いた検討によっても、強度依存の運動時換気亢進のメカニズムを、高い精度で定量的に検出できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は慢性心不全モデルラットの運動時呼吸異常発生機構における呼吸調節機序の解明に取り組み、呼吸異常を精度よく定量的に検出するための方法論の基礎を確立することに成功した。 正常ラットでの呼吸調節機序は、健常なヒト運動時の変化とほぼ同様の結果を示すことから、自発呼吸麻酔下モデルラットによるプログラム通電刺激を用いた検討によっても、強度依存の運動時換気亢進のメカニズムや呼吸調節系の病態異常を、高い精度で定量的に検出できる可能性が示された。これにより次年度以降の基礎研究における実験的検証に意味をもたせることができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
運動時の換気亢進反応に及ぼす循環調節因子が呼吸調節系の換気決定機構に及ぼす影響 対象:16週齢の正常オスSDラット群(n=24)を対象に、αクロラロース及びウレタンを腹腔内投与し、麻酔自発呼吸下で実験を行う。前年度完成させた同一個体内で呼吸調節系と循環調節系を相互に独立して外部制御(開ループ解析)できる実験システム [Ⅰ]、[Ⅱ]を利用し、以下の研究プロトコール①②を段階的に実施する。 プロトコール① ;頸動脈洞への段階的(60mmHg、100mmHg、160 mmHg)な圧入力操作(制御部操作)が安静及び運動時の呼吸動作点や、呼吸調節系の制御部(PaCO2→VE関係)及び制御対象部(VE→PaCO2関係)に及ぼす影響を調査し、圧受容器反射を介した循環システム修飾因子が呼吸調節機構に及ぼす影響の貢献度を評価する。 プロトコール② ;脱血および輸血を用いた中心血液量の増減操作(制御対象部操作)が安静及び運動時の呼吸動作点や、呼吸調節系の制御部(PaCO2→VE関係)及び制御対象部(VE→PaCO2関係)に及ぼす影響を調査し、中心循環動態の変化を介する循環システム修飾因子が呼吸調節機構に及ぼす影響の貢献度を評価する。
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