研究課題/領域番号 |
15H03104
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
中井 敏晴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 室長 (30344170)
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研究分担者 |
Bagarinao E. 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任准教授 (00443218)
江見 美果 (上野美果) 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 研究員 (00779697)
鈴木 敦命 東京大学, 人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80547498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 加齢 / 運動処方 / 脳機能計測 / fMRI / 帯状回 / 認知訓練 / 安静時脳活動 / 神経機能結合 |
研究実績の概要 |
29年度は習慣的な運動日常の活動レベル(Physical Activity, PA)に注目してさらにデータ集積を進めPA、安静時脳活動(Resting State Network, RSN)の活動、白質変成(White Matter Hyper Intensity, WMHI)の関連性について解析を進めた。身体感覚統合と関連する前部帯状回の活動が長期的な運動習慣によっても変化し、運動習慣のある群は加齢による活動亢進が軽度であることを確認した。この結果から長期的な運動習慣は神経回路の恒常性維持に貢献し、RSNはそのbiomarkerの有力候補であることが示唆された。運動想像(Motor Imagery, MI)課題を使ったNeuro-feedback(NF)測定ではこの領域の活動が学習過程において強化されたこともその仮説を裏付けていると考えられた。対人リスク予測認知課題を改良し加齢変化を検討するデータ収録を完了した。結果からは側頭-頭頂接合部や楔前部などのRSNで年齢差が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳機能マップから得られた所見とその責任神経回路が短期訓練、長期的運動習慣、NFを使った強化学習による初期応答、脳波(海外共同研究先)の間で一致しており、運動処方に対する応答を評価するbiomarkerとしての意義を運動系の神経基盤の観点から説明できる見通しが得られた。また、形態画像と脳機能画像のそれぞれについて機械学習による判別分析の応用を進めているが、行動データとの関連性をより高精度で推定できるようデータ容量圧縮の方法を検討している。共通の解析プラットフォームが構築してscalabilityを確立できれば大規模データベースとの連携が可能になるので、従来法の解析に加えて新たな評価軸が得られるものと期待される。全体としては、概ね予定した進捗状況と考えている。信頼性の印象更新に関わる脳活動の加齢変化を検討するためのfMRI実験のデータを取り終えた(高齢者25名,若年者25名)。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は以下の事項を中心に取りまとめを行う。健康体操教室参加者のサンプル集積をさらに進めデータベースの頑強性を向上させる。NF計測に用いる課題を改良し、強化学習により観測される短期学習を反映させる脳活動の変化と行動データ、特に運動歴調査結果との関連性を評価する。転倒と並んで高齢者にとって重要な課題である対人リスク予測認知とPAの関連性を検討し、社会的リスク回避の観点から運動処方の意義について取りまとめる。健康体操指導者向けのセミナーを開催し本研究から得られた知見を提供する。
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