研究課題
反応性愛着障害(RAD)の神経基盤を探るために、DSM-IV-TR(米国精神医学会による国際統一診断基準)において、RADの診断基準を満たした患者群(5名)、ADHD群(17名)、定型発達群(17名)の3群を対象に、金銭報酬課題を用いた機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を実施し、報酬の感受性に関わる脳の活性化を比較した。この調査では、子どもたちにカード当てのゲームをしてもらい、ひとつは当たるとたくさん小遣いがもらえる(高額報酬)課題、もうひとつは少しだけ小遣いがもらえる(低額報酬)課題、最後はまったく小遣いがもらえない(無報酬)課題で構成されており、それぞれの課題の実施中にfMRIを用いて脳の活性化領域を調査した。定型発達の子どもは、小遣いが多くても少なくても、脳の線条体と視床が活性化した。つまり、報酬の感受性が高く、どんな状況下でもモチベーションが高いということがわかった。一方でADHDの子どもは、小遣いがたくさんもらえるゲームのときは線条体と視床が活性化したが、少しの小遣いだと反応がなく、それだけ「やる気がおきにくい」ことが見てとれた。一方RADの子どもは、いずれのゲームでも活性化がみられませんでした。つまり、高額報酬のみに反応したADHD群と違い、RADでは高額報酬にも低額報酬にも反応せず、報酬の感受性低下が顕著で、モチベーションが喚起されにくい状況にあることがわかった。この結果は、RADの子どもにおいて脳の特定部位が機能低下していることを示唆する貴重な知見である。本成果を広く社会還元するために平成27年9月にプレスリリースを行い、様々な報道(NHK、福井新聞、読売新聞、朝日新聞など)等で取り上げられた。
1: 当初の計画以上に進展している
脳MR画像研究(fMRIおよびVBM法)を用いたRAD児の脳機能評価により、RADの病態解明、治療法の開発に貢献する可能性を当該年度の成果で確認できた。本研究の独創性を反映したユニークな視点、手法による結果が得られたため、当初の予定を超える順当な成果をあげたと評価できる。
今後さらに症例数を重ねて詳細な検討を行い、愛着障害の発症メカニズムの解明や客観的に測定可能な指標に基づく診断法の確立、オキシトシン点鼻による治療法の開発をめざす。
http://tomoda.me/research.htmlhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?cmd=search&term=Tomoda+A%5Bau%5D&dispmax=50
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