ポリエステル、ポリアミド、及びハイブリッド体の合成CD解析を行った。昨年に引き続き、L-乳酸を出発原料として、L-乳酸オリゴマーの合成を実施した。また、対応するポリアミド体及びポリエステル+ポリアミドのハイブリッド体の合成を実施した。ポリアミド体は同様な立体化学を有しているにもかかわらず、反対のらせん構造を有していることが知られている。合成した6つの六量体のECD及びVCDを測定した。エステルカルボニル、アミドI及びⅡのIR、VCD吸収が観測され、これらのスペクトルから立体構造を解析した。また、ECDスペクトルからもアミド部分の二次構造を検証した。ハイブリッド体の立体構造解析により、単独ではβ-ストランド構造を有しているポリL-アラニンに三つのL-乳酸を導入することにより、左巻きへリックス構造へと誘起させることが確認できた。 更に、カルボニル基以外のIR官能基の検討を実施した。開発したVCD励起子キラリティー法は、原理的には、カルボニル基のみならず、他の官能基にも、適用可能と思われる。独立した位置に吸収をもち(アサインが容易)、振動モードが単純、かつ化学的に導入が可能な官能基として、アジド基、ニトリル基、イソニトリル基、アルキンなどが候補として考えた。コンフォメーションが既定されたビナフチルを母核として選択し、それぞれの官能基を有する4つのビナフナチル誘導体の合成を実施した。アルキンでは明確なピークは観測されなかったが、ニトリル、イソニトリルではフェルミ共鳴と思われる複雑なスペクトルを観測することができた。また、アジドに関してはカップルしたスペクトルを観測したもののそのコンフォメーションの予測が困難であることが判明した。
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