研究課題
システインチオール基[Cys-SH]にさらに過剰なイオウ原子が付加したシステインパースルフィド[Cys-SSH]やポリスルフィド[Cys-S(S)nH]はその強力な抗酸化活性が明らかになり、活性酸素の多彩な生理活性を制御する活性イオウ分子として注目されている。本研究では、活性イオウ分子のハイスループット解析法を構築し、既に確立した質量分析に基づく精密同定・定量法と、大腸菌の網羅的遺伝子欠損株を駆使して、これまでほとんど分かっていない細菌における活性イオウ分子の代謝(生成、分解)機構を解明する。さらに近年明らかになりつつある抗菌剤の殺菌機構における活性酸素の作用に対して、活性イオウ分子がどのように関わっているのか、その分子基盤を明らかにし、新しい抗菌剤感受性の制御機構の解明に向けた研究を推進する。本年度は、菌体からの活性イオウ分子の抽出方法について検討を行った。対数増殖期の細菌培養液0.4 mLから検出感度に十分なシステインパースルフィド関連分子を、モノブロモビマンで誘導体化して抽出でき、タンデム質量分析装置にて定量できることがわかった。さらに本法を用いて、様々なグラム陰性菌について、活性イオウ分子の網羅的解析を行った結果、大腸菌、緑膿菌、セラチア菌、ネズミチフス菌、チフス菌、赤痢菌において、システインパースルフィド、グルタチオンパースルフィドの生成を明らかにした。今後、これら細菌における活性イオウ分子の生体機能について解析を行なう。
1: 当初の計画以上に進展している
当該方法により、グラム陰性菌での活性イオウ分子の検出に成功した。
本法をグラム陽性菌にも適応を拡大するとともに、細菌における活性イオウの役割、特に抗菌剤感受性をはじめとするストレス適応反応における役割を解析する。
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