研究課題
システインチオール基[Cys-SH]にさらに過剰なイオウ原子が付加したシステインパースルフィド[Cys-SSH]やポリスルフィド[Cys-S(S)nH]はその強力な抗酸化活性が明らかになり、活性酸素の多彩な生理活性を制御する活性イオウ分子として注目されている。本研究では、活性イオウ分子のハイスループット解析法を構築し、既に確立した質量分析に基づく精密同定・定量法と、大腸菌の網羅的遺伝子欠損株を駆使して、これまでほとんど分かっていない細菌における活性イオウ分子の代謝(生成、分解)機構を解明する。さらに近年明らかになりつつある抗菌剤の殺菌機構における活性酸素の作用に対して、活性イオウ分子がどのように関わっているのか、その分子基盤を明らかにし、新しい抗菌剤感受性の制御機構の解明に向けた研究を推進する。昨年度までに、様々なグラム陰性菌において、システインパースルフィド、グルタチオンパースルフィドが内因性に生成していることを明らかにしてきた。そこで本年度は、その酸化ストレスに対する機能を解析した。新たに開発したパースルフィドドナーで細菌を処理すると、菌体内のパースルフィドを選択的に増加することが可能となった。そのようにしてパースルフィドを増加させた細菌は、過酸化水素処理や、マクロファージによる殺菌に対して顕著に抵抗性を示すことがわかった。このことから、細菌のパースルフィドが活性酸素に対して防御的に作用していることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
細菌の酸化ストレス抵抗性において、パースルフィドが防御因子として関わることを明らかにできた。
細菌におけるパースルフィドの制御(生成と分解、代謝)機構を明らかにし、それを標的とした新しい抗菌治療の可能性を探る。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Free Radic. Biol. Med.
巻: 106 ページ: 69-79
10.1016/j.freeradbiomed.2017.02.023.
Nucleic Acids Res.
巻: 45 ページ: 435-445
10.1093/nar/gkw745.
Biol. Pharm. Bull.
巻: 40 ページ: 365-374
10.1248/bpb.b16-00880.
Sci. Rep.
巻: 7 ページ: 41984
10.1038/srep41984.
Chem. Lett.
巻: 46 ページ: 594-596
org/10.1246/cl.161198
Biochem. J.
巻: 474 ページ: 1149-1162
10.1042/BCJ20160999.
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 480 ページ: 180-186
10.1016/j.bbrc.2016.10.022.
巻: 478 ページ: 7-11
10.1016/j.bbrc.2016.07.110.
http://kumadai-bisei.com