研究課題/領域番号 |
15H03116
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井本 正哉 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60213253)
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研究分担者 |
斉木 臣二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00339996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 神経変性疾患 / がん |
研究実績の概要 |
オートファジー制御機構の解析のために,東京大学水島昇教授より供与された pMRX-IP/GFP-LC3-RFPを鋳型にpGCDNsamMCSV/GFP-LC3-RFPプラスミドを作製した.このプラスミドとpVSV-Gプラスミドを293 GP-2細胞へトランスフェクションして得たレトロウイルスを,293 GP-G細胞に感染させ,FACSによるソーティングを行って293 GP-G/GFP-LC3-RFPレトロウイルスパッケージング細胞を樹立した. RAで分化させたSH-SY5Y細胞に0.5 mM MPP+ を24時間処理して一度αシヌクレイン凝集物を形成させてから,10 マイクロg/ml SO286と30 nM Bafilomycin A1(BMA : オートファジー阻害剤)と0.1 nM MG132(プロテアソーム阻害剤)をそれぞれ共処理した. その結果,MG132とSO286を共処理した時,SO286による凝集物クリアランス効果は見られたが,BMAと共処理した時,SO286の作用は見られず凝集物の蓄積が見られた.以上のことから,SO286はオートファジーを介して凝集物をクリアランスしていることが分かった. 当研究室の保有する放線菌培養液1160サンプル、化合物ライブラリ320サンプルについてスクリーニングを行った。その結果、放線菌2142A-36株培養液に、コントロール細胞にのみ細胞死を誘導する目的の活性を見出した。そこで、放線菌2142A-36株培養液から活性物質の単離精製を試みた。放線菌2142A-36株を大量培養して頂き、培養液から抽出物1.9172 g を得た。ヘキサンによる脱脂後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて化合物の極性による分離を試みた。さらに、Sephadex LH-20 Lab Packsを用いて単離精製を実施し、目的の活性を有する活性画分を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジー制御機構解析研究においては,測定方法を変更したことで遅れが生じたかに見えたが,高タイターのウイルスを用いることで,その遅れを解消できたと考えられる. また,SO286化合物を用いたパーキンソン治療薬シードの開発については,神経細胞やモデル細胞系の種類を増やし,当初用いていた細胞(PC12D)における特異的現象ではないことが明らかにできた.また,SO286の標的タンパク質ファミリーの遺伝子をクローニングでき,順調に進行している. オートファジー細胞死誘導物質については,放線菌の生産量が低いことが予想され大量培養を行う必要が生じたが,精製は順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
1)東京大学水島より頂いたGFP-LC3-RFP-(LC3ΔG)という新たなオートファジー測定プローブを用いることとする. GFP-LC3-RFPを発現させるための高タイターウイルスを完成させ,プローブを発現する細胞株を樹立する.また,その間に解析に使用するオートファジー誘導剤とシグナル伝達阻害剤を決定し,毒性等の濃度検討を行う.続いて,化合物・細胞株のオートファジー測定を完了させ,各種統計解析・クラスター解析により細胞株間でのオートファジー制御機構を比較解析する.また細胞株間で違いが見られる場合にはtf-LC3等を用いた個別解析を実施する. 2)これまでに,SOBP1のノックダウンによって,SO286の凝集物形成阻害効果がキャンセルされた.しかし,siRNAの持続効果が短いことを理由として,SO286による凝集物クリアランスがどうなるかは検証していなかった.そこで,SOBP1のノックダウンによって,SO286が持つ凝集物クリアランス活性もキャンセルされるのかどうかを検証する.また,SOBPは1~4までファミリーを形成しており,その構造はとても近いことが知られている.また,これらのタンパク質は,神経変性疾患への関与や,オートファジーと関連があるという報告がある.これらのことから,SOBP1以外のSOBPファミリータンパク質もSO286が持つ凝集物形成阻害効果,及びクリアランス効果に関与している可能性を検証する. 3)オートファジー細胞死誘導活性を生産する放線菌を大量培養し,シリカゲルクロマトグラフィー,ゲル濾過クロマトグラフィー、LC/MS等を用いて単離精製を実施する.また,CRISPER/Cas9システムを用いてAtg7をノックアウトした細胞を作製し,単離精製した化合物のオートファジー細胞死誘導活性を用いて評価する.単離精製した化合物の構造をNMR等用いて構造決定する.
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