研究実績の概要 |
天然物ならではの優れた生体制御機能を合成化学的に拡張するアプローチとして,申請者らが数年来手がけている“骨格多様化合成”を更に発展させる。生合成経路の分岐点に存在する鍵中間体に着目しつつ、合成化学的な展開を見据えて適切な官能基を導入した多能性中間体を設計・合成する。短寿命の仮想中間体を安定化し、骨格形成反応の位置・立体・エナンチオ選択性を制御するための合成論理や戦略の提案と体系化を進める。 一般に容易に酸化されるジヒドロピリジンを確実に取扱うため、3位に電子吸引性のカルボニル基を共役させた1,6-ジヒドロピリジンを多能性中間体として設計した。本年度は、三成分を集積し、様々なR1-R4, R6を有するエンイン環化前駆体を合成した。以前申請者らが独自に開発したカチオン性銅触媒による6-endo環化法(Nat. Chem.2014, 6, 57)を基盤としつつ、配位子や反応条件を最適化した。また、重水素標識基質を活用した実験結果に基づいて反応機構を推定した。N1, C2, C3, C4, C6 位に種々の置換基を導入した基質群での適用範囲を調査した。多置換ジヒロドピリジンを合成する一般性の高い方法を確立し、詳報を公表した(Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 5955.)する。 2位に置換基/水素を導入しつつ、共役ジエンを異性化させ1,2-ジヒドロピリジン環等へ変換する手法を実現できた。更に、C2,C4位の求電子性とC3,C5位の求核性を引き出し、多置換のテトラヒドロピリジンやピペリジン環を位置・立体選択的に合成する手法を開発した。天然物や医薬品の母骨格を系統的に迅速合成する適用範囲の広い手法を開発する研究基盤を整備することができた。
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