研究課題/領域番号 |
15H03120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水上 進 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30420433)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / Mg2+ / 生細胞イメージング |
研究実績の概要 |
細胞内動態について不明なことが多いMg2+の局所解析を可能にする蛍光プローブ開発を行った。市販Mg2+蛍光プローブは低分子であり、細胞内で素早く拡散するとともに、長時間測定においては細胞外への漏出が問題となる。それゆえ、細胞内局所のMg2+濃度変動を可視化するのは、現状では困難である。そこで本年度は、生細胞内で発現させたタグタンパク質に結合可能な新規Mg2+蛍光プローブを開発した。続いて、核や細胞膜内葉などの細胞内局所にタグタンパク質を発現させ、そこにMg2+プローブを特異的に共有結合させることで、特定のオルガネラや細胞内ドメインにおけるMg2+の可視化が可能となった。続いて、局在させた蛍光プローブの細胞内局所での滞留性を調べた。その結果、プローブ投与から24時間後においても細胞内から十分な蛍光が観察され、細胞内Mg2+動態の長時間解析も可能となった。 次に、アポトーシス時の細胞内Mg2+動態のイメージングを試みた。アポトーシスは数時間におよぶ細胞内イベントであり、既存の低分子Mg2+プローブではリアルタイム解析が不可能であった。新規プローブを用いて解析した結果、アポトーシスによる細胞縮小の後、細胞内Mg2+濃度の増大が見られた。また、細胞内ATP濃度との強い相関も見られた。本研究結果は、アポトーシスにおける細胞内Mg2+濃度上昇が、細胞内ATPに配位していたMg2+が解離した結果であることを強く示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、タンパク質ラベル化技術を応用した蛍光プローブを開発し、細胞内で素早く拡散する分子(Mg2+)の局所濃度を測定することが初めて可能となり、生理活性分子の局在を高解像度で可視化する目的には一歩前進した。また、新たな生命現象に関する知見を得ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
開発したMg2+蛍光プローブは、細胞内のCa2+濃度変化には応答しなかった。一方、小胞体などのオルガネラはCa2+濃度が高いため、それらのオルガネラ内部のMg2+濃度とCa2+濃度を区別することは、開発したプローブを用いたとしても困難である。そこで今後は、オルガネラ内のMg2+濃度変化をCa2+濃度変化と区別するために、よりMg2+選択性の高いプローブの開発が求められる。
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