研究実績の概要 |
概要:本研究の目的は、情動特にストレスによる認知行動の変化、そしてその神経基盤を明らかにすることである。プロジェクトの2年目では、サルにおいて、異なるストレス強度下における高次認知行動課題のパーフォーマンスと自律神経反応等の生体信号の変化の計測と解析を行ない、ほぼ完了した。神経生理実験では、大脳基底核線条体細胞の発火を解析し、行動や自律神経反応との関連を解析し、現在、論文執筆中である。分界条床核BNSTについては2頭目の動物から記録中である。 詳細:行動課題においては、中心点を注視すると、左右に異なる視覚刺激が呈示されるので、正しい方を眼球運動によって選択する。視覚刺激A,B.Cは恒久的に報酬(A)、罰(B,エアパフ)、音(C)にそれぞれ関連付けられ、3つのうち2つのペアつまりAB,BC,ACのうち一つ(理想的には、ABではA,BCではC,ACではA)を選択する。この課題をサルが行っている際、心拍数、顔面温度、瞳孔径、瞬目を測定した。 解析結果:2匹において、罰が選択肢に含まれていると(AB,BC)、選択行動にエラーが起きやすいことはすでに示されているが、詳細な解析により、この傾向は課題開始時に強く、次第にエラーが減少することが分かった。また、瞳孔径・心拍数も、罰が含まれているペアで増大したが、これも課題を継続すると次第に変化する。このように、「罰の可能性」つまりストレスがあると認知行動の障害や交感神経優位の変化が引き起こされるが、課題を継続するとそれを克服する機構が働き始める経過が明らかになった。 同様の行動課題をヒトで測定するシステムの構築も行った。
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