研究実績の概要 |
平成30年度は、本課題のまとめの年であった。研究代表者、分担者は、前年度までに収集した県域のデータに基づき、それぞれのテーマによるケーススタディの執筆準備に入った。年度を通じ毎月1度のペースで研究会を開き、引き続き関連文献の輪読を進めるとともに、各自のケーススタディについての報告と意見交換を行った。 具体的な輪読文献としては、山東省鄒平県を事例とし、県域社会を舞台とした学校教育の変遷を辿ったThogersen, Stig (2002) A County of Culture、および同じ鄒平県の県城において近年、進行中の都市化過程を描いたKipnis, Andrew (2016) From Village to Cityを取り上げた。 また研究代表者、分担者自身の研究報告として、「文化大革命期の中国における食糧流通と農村の変容」(松村: 2018年5月)、「都市=農村間の人的環流」(田原: 2018年6月)、"A Peasant Perspective on China's Urbanization" (田原: 2018年10月)、"Rural-urban Human Circulation: A Comparison between China and Russia、"「1950年代の中国における食糧徴発と基層政権建設─主に黒龍江省を事例として」 (角崎: 2019年1月)、「学校教育と県域社会─広西チワン族自治区靖西県における靖西中学を例として」(大澤: 2019年1月)などが挙げられる。これらの報告はそれぞれケース・スタディとして執筆過程にあるが、一部は既に刊行されている。本課題の遂行を通じ、中国の県域社会を事例として取り上げながら、今後、国際的な視野による「都市化研究」に向けて発展させるための基礎を築くことができたといえる。
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