研究課題/領域番号 |
15H03135
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研究機関 | 新潟国際情報大学 |
研究代表者 |
瀬戸 裕之 新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90511220)
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研究分担者 |
河野 泰之 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (80183804)
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (10513517)
岩井 美佐紀 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80316819)
倉島 孝行 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 研究員 (20533011)
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10586382)
今村 真央 山形大学, 人文学部, 准教授 (60748135)
西本 太 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 客員研究員 (60442539)
大野 美紀子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (80406701)
佐藤 奈穂 金城学院大学, 国際情報学部, 講師 (10600108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東南アジア / 内陸部 / 戦争 / 紛争 / レジリエンス / 復興 |
研究実績の概要 |
本研究は,東南アジア大陸部地域を,戦争から多大な影響を受けてきた「被戦争社会」として位置づけ,戦争が各地域の社会形成に及ぼしてきた諸作用やメカニズムについて比較考察し,住民の生存戦略を明らかにすることによって現代の東南アジアの社会形成過程に関する新たな分析軸を提示することを目的とする。 平成28年度は,本科研の2年目にあたり,各メンバーが自らが担当する地域において現地調査を実施し,各地域の戦争・紛争の経緯と影響,戦争において地域住民が行ってきた生存戦略について事例を収集した。 平成28年12月、平成29年1月には研究会を開催し,現地調査によって明らかになった各地域での戦争と地域住民の対応を報告し,議論を行った。12月の研究会では,南部ベトナムの宗教に関する戦争期から現在までの変化について報告が行われた。カンボジアの事例では,ポルポト時代に強制移住を経験した人たちによる土地の獲得と,女性たちによる生業に関する報告があり,女性たちの生業が移住後の生活再建に貢献したケースが紹介された。1月の研究会では,ベトナム北部におけるベトナム戦争期の北爆下での女性の役割について報告があり,銃後における女性の役割が紹介された。さらに,ミャンマー北部における事例については,ミャンマーの戦争と,少数民族軍と村人の関係について紹介され,この地域の戦争の相違点と,住民の対応に関する他地域との共通性が紹介された。 今年度の調査・研究により,各地の戦争・紛争と村人の生存戦略について興味深い事例を集めることができた。その一方で,「被戦争社会」,「レジリエンス」という概念に関する議論については,充分に行うことができなかった。今後は,これまでの現地調査で得られた情報を整理しながら,「被戦争社会」,「レジリエンス」といった概念との適合性について議論を深める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の目的は,前年度に議論した調査研究の方向性と実施計画に基づきながら,各メンバーが担当する地域(ベトナム,ラオス,カンボジア,ミャンマー,タイ)において現地調査を実施し,研究目的に基づいて興味深い事例を発掘し,予備考察を実施することであった。 平成28年度に本研究のメンバーが,それぞれ,自らが担当するベトナム北部,南部,タイ東北部,ラオス南部,カンボジアで現地調査を実施し,各地域の戦争・紛争の状況と,住民の戦争との関りについて興味深い事例を発掘することができた。 さらに,平成28年度の後期に2回の研究会を開催し,メンバーが現地調査で発掘した事例に関する報告を行い,各国・各地域における戦争の状況と住民の対応戦略についてメンバー間で意見交換を行い,各地域の相違点と共通性に関する議論を深めることができた。 研究会では,「被戦争社会」,「レジリエンス」といった概念についても,各地の事例に基づいて意見交換を開始した。その結果,東南アジア大陸部の中でも,国や地域によって戦争・紛争の形態が異なっていることが明らかになった。また,戦争に対する地域住民の対応についても,従来の「レジリエンス」という概念が適用できるか,意見交換を行うことができた。 以上の活動成果から,平成28年度の研究活動は,「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,本研究の3年目である。平成29年度の研究課題は,昨年度の調査・研究によって明らかになった情報を整理し,考察の中心となる事例について補足調査を行うとともに,「被戦争社会」,「レジリエンス」といった本研究の中心概念と対照しながら,事例の適合性を考察する,あるいは,事例から得られた情報に基づいて,「被戦争社会」,「レジリエンス」といった概念に新たな解釈ができないかフィードバックを行うことである。 昨年度から残されている課題は,各国の現地調査の中で明らかになった興味深い事例を踏まえながら,本研究の中心概念である「被戦争社会」,「レジリエンス」と比較検討し,東南アジア社会を研究するうえで「被戦争社会」という枠組みは有効か,地域住民による戦争への対応と生存戦略をとらえる上で,「レジリエンス」という概念は適用可能か,考察することであった。平成29年度は,年に4回の研究会を開催し,各事例から明らかになった情報に基づいて,「被戦争社会」,「レジリエンス」といった概念に関して,引き続き議論を深める。 さらに,メンバー間での議論に加えて,東南アジア学会関西例会などにおいて研究成果の一部を報告し,これまでの成果を公表するとともに,外部の研究者から本研究に対するコメントを求める機会を設ける予定である。外部からコメント,意見を得ることで,研究をより発展させ,考察を深めるきっかけとする。 平成29年度の後期には,平成30年度に研究成果を出版することを目標に,研究成果物の出版のための企画立案の作業にとりかかる予定である。
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