研究課題/領域番号 |
15H03139
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
黒須 里美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (20225296)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歴史人口学 / 東アジア / データベース / 世帯 / イベントヒストリー分析 / 宗門人別改帳 / 結婚 / 出生 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東アジアで開発の進む歴史人口データベースを用い、近代化以前~移行期の人口と家族の実証的比較研究から、庶民のライフコースの共通性と多様性を探り、近代人口成長前の東アジア社会の特徴を明らかにすることである。本年度の成果を以下3点にまとめる。 1.東アジアの歴史人口データを利用した比較研究:結婚、出生、移動を中心に比較分析を継続した。各国の歴史人口データを利用した結婚と離婚に関した300年という長期比較研究、社会階層間、エスニシティ間の結婚の特徴の研究、結婚と女児・男児選好の関係、などについて、国内外の学会で発表し、国際ジャーナルへ投稿した。日本のデータについては移動の空間分析をスタートした。さらにCameron Campbell氏とともに東アジアを中心とした歴史人口学研究の現在をまとめて刊行したことも大きな成果であった。 2.近世から近代移行期日本のデータ拡充と基礎人口経済統計の作成:データベースの拡充のために、これまで空白地域であった越後国頸城郡を中心とした約40村の宗門改帳から作成された基礎シートを利用し、個人の特定・照合と移動情報の記号化を行い、内10村についてデジタル化を進めた。この他、経済指標として利用できる世帯の持高を整理し、約70村のデジタル化を行った。また、Dong Hao氏と共にデータベース構築を進める徳川後期の長期データ約50町村の内15村について、続柄とイベント情報の再チェックを行い、データのクリーニングと再カテゴリー化を継続した。基礎人口経済統計 としては、髙橋美由紀氏とともに、地域別人口と世帯規模の変動の作成をスタートした。 3.戦前台湾の日本人居住地区調査:台湾の戸籍を利用し、Wen-Shan Yang氏の協力のもと、花蓮周辺をはじめとした旧日本人村とそれ以外の村における人口基礎統計の算出を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本のデータベースの拡充については、マニュアルによるデータクリーニングと世帯・個人情報の再コード化に時間を有しており、当初計画よりもマンパワーを投入して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
3つの研究目的、(1) 東アジアの歴史人口データを利用した人口と家族の比較分析、(2) 近世から近代移行期日本のデータ拡充と基礎人口経済統計の作成、(3) 戦前台湾の戸籍の分析、を継続発展させて行う。 (1)については、各国の研究成果を比較し、まとめる作業も含まれる。(2)については、引き続きマニュアルによるデータクリーニングと世帯・個人情報の再コード化を、マンパワーを導入して進め、その後STATAを使ったデータベースの構築と統計分析を行う。(3)については、台湾の研究協力者の協力を得、花蓮地域の人口学的特徴を整理する。 本年度は本科件の最終年度であることから、成果公開を鑑みたデータベースの拡充も必要となる。また、これまでの成果をベースに、長期的視点から東アジアの人口と家族の比較研究をまとめるべく、6月の日本人口学会(明海大学)、7月のWEHC(国際経済史学会、ボストン)、11月のSSHA(社会科学史協会、フィーニックス)でセッションを企画し、報告と議論を重ね、研究のまとめを試みる。
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