本研究の目的は、東アジアで開発の進む歴史人口データベースを用い、近代化以前~移行期の人口と家族の実証的比較研究から、庶民のライフコースの共通性と多様性を探り、近代人口成長前の東アジア社会の特徴を明らかにすることである。本年度の成果を以下3点にまとめる。 1 東アジアの歴史人口データを利用した比較研究:台湾と中国の海外研究協力者とともに、「養子慣行」を切り口とした日本、台湾、韓国の比較研究を推進した。特に婿養子と普通養子という分類を取り外し、男女年齢という人口学的指標でとらえることで比較の可能性を広げた。また世帯を超えた親族の影響モデルを検討した。日本のデータについては近世と現代をブリッジした結婚と離婚、移動の地域分析などのテーマを中心に、国内外の学会で発表し、国内・国際ジャーナルへ投稿した。 2 近世から近代移行期日本のデータ拡充と基礎人口経済統計の作成:(1) 越後国頸城郡を中心とする入力作業を継続し、宗門改帳から作成された基礎シート(BDS)15ヶ村の入力とチェックを行った。(2) Dong Hao氏と共にデータベース構築を進める徳川後期の長期データ約50ヶ村の続柄とイベント情報のオリジナル資料との突き合わせチェックを継続し、そのうち5ヶ村の統合ファイルのチェックを完了した。(3)経済指標として利用できる世帯の持高を整理し、美濃国安八郡西条村をはじめとして長期に継続する9ヶ村の宗門・人別改帳の世帯の持高情報の入力を行った。(4)髙橋美由紀氏とともに基礎統計としての地域別人口と世帯の変動をまとめた。 3 戦前台湾の日本人居住地区調査:Wen-Shan Yang氏の協力のもと、花蓮周辺の旧日本人村とそれ以外の村における日本人移住者の人口と経済の概要をまとめた。
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