研究課題/領域番号 |
15H03150
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷川 多佳子 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (30155204)
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研究分担者 |
津崎 良典 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10624661)
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20178156)
望月 ゆか 武蔵大学, 人文学部, 教授 (30350226)
川中 仁 上智大学, 神学部, 教授 (60407343)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デカルト / ライプニッツ / フランソワ・ド・サル / イグナティウス・デ・ロヨラ / イエズス会 / ポール・ロワイヤル派 / 霊性 / 瞑想/黙想/省察 |
研究実績の概要 |
14世紀後半から17世紀後半までの西洋哲学・神学史におけるメディタチオ(省察/瞑想/黙想)論の体系的分析を目指す本研究の二年目は、各論としてとりわけ以下の点に取り組んだ。 1/ 昨年度からの継続課題として本年度もデカルトからライプニッツまでを軸に、哲学的メディタチオの概念的変遷の系譜を辿った。とりわけ、宗教的メディタチオの裏面として哲学的メディタチオを概念的に規定するメランコリー、不安、悪魔憑きに関する問題論的研究をおこなった。また、それらが収斂して明るみに出る近世ヨーロッパにおける主体の諸問題を、日本思想(森有正の経験論など)との比較を通じて考察し、その特徴を剔抉した。 2/ イグナティウス・デ・ロヨラの霊操については、とりわけmisericordia概念の意味するところを、聖書、トマス・アクィナス、教皇文書などと比較しながら明らかにした。 3/ 宗教的メディタチオに関しては、その大衆化(ならびにその弊害)について、トレント公会議後の信徒教化の柱である聖体と改悛の秘跡との関連から考察を継続した。中心はアルノー『頻繁な聖体拝領』であった。とりわけ本著作の執筆開始前に著者が体験した回心について、ソルボンヌ時代の空白期間の謎を解明し、より正確な伝記的理解の提示が可能となった。 また、『信心生活入門』(1608年)ならびに『神愛論』(1616年)で知られるフランソワ・ド・サルの霊性論と特徴を、フランス人研究者と協力しながら分析した。神秘主義の歴史におけるサルの独自性のほか、非知が知より優位といった現代思想でも重要なテーマ群(たとえばバタイユやヴェイユ)との関連、トマス・アクィナスやアウグスティヌスなどの先哲受容の独自性、デカルト、パスカル、アルノー(とりわけ『頻繁な聖体拝領』の瞑想に関連する章の中にサルの影響を見出すことができた)などの同時代人との相違点などを考察対象とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に明示した各論研究の昨年度以降の進展がおおむね計画立案時に予想したものであり、かつ、それに伴って一定の成果を上げることができたため。また、国際協働を目指す本研究の計画通り、本年度はとりわけトゥール大学(フランス)とブリュッセル自由大学(ベルギー)の研究者との共同研究を行い、一定の成果を上げると同時に、次年度以降の共同研究の布石を打つことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した各論の展開の方向性に基本的には従いつつも、本年度の国際協働研究によって研究課題として新たに認識された以下の二点を重点的に取り組む。1/ 近世(トレント公会議以降)におけるメディタチオの変容、2/(後期)中世霊性論におけるaffectusの問題、以上である。これらは、申請書に記載した各論の射程を広げる可能性を秘めたシーズである。これら二点に関する研究を促進するために、両者に造詣の深いフランス人研究者をロレーヌ大学より筑波大学に招聘し、共同研究を行う。また、14世紀後半から17世紀後半までのメディタチオ論に関連する一次資料の日本語による整備も継続する。
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