研究課題
われわれのプロジェクトは、身体動作をある程度こなすことのできる人型ロボットに<個性>を付与することによって、(1)「個性」の認知哲学的基盤を解明し、また、(2)現在流行しつつある人型ロボットの性質と能力を「個性」の観点から評価し、それによって(3)将来における人間とロボットの「個性をベースにした共生」のあり方を探求することである。今年度は、4回にわたる「研究打合せ」を行い、第2回目からは、実際の人型ロボット(ソフトバンク社製のペッパー)の動作確認と、会話を中心としたインタラクションの準備を行った。第1回は中京大学豊田キャンパスで開催し、今年度の研究方針と各分担者の役割分担を決定した(5月3日~4日)。第2回は琉球大学及び沖縄高専で「複雑系科学×応用哲学 第2回沖縄研究会」として開催し、各分担者の研究発表と、沖縄高専で購入しているペッパーの身体動作能力を具体的にチェックした(8月19日~8月21日)。第3回は、金沢大学サテライトプラザ武蔵及び北陸先端大で開催し、10月に自分たちで購入したペッパーを主に会話機能の面でチェックし、どのような対人コミュニケーションが可能かを検討した(12月27日~29日)。第4回も金沢大学サテライトプラザ武蔵及び北陸先端大で開催し、ペッパーに会話の中で与えるべき「個性」を実装するためのプログラムを開発するため、その「個性」の具体例として当面、2タイプの性格(頑固・強引型と迎合・優柔不断型)を会話のプロットとして作成した(平成28年3月6日~8日)。なお、これらの研究打合せの詳細は、当科研費研究ウェブサイト:http://siva.w3.kanazawa-u.ac.jp/katsudo-h27.htmlを参照されたい)。今年度全体として、会話に見られる性格としての「個性」をプログラムに落とし込む準備が整った、と言える段階である。
2: おおむね順調に進展している
ソフトバンク社製のペッパーの購入時期が遅れ、なおかつ購入価格が予想より高かった点、及び「個性概念」に関する哲学史的ならびに心理学史的な調査をあまり深く掘り下げられなかった点は残念であるが、それらは研究全体の進行を妨げる問題ではない。また、ロボット(ペッパー)に「個性」を与えることの意味の明確化とその具体的な手順に関して相当程度進展があった点は、われわれの研究プログラムが順調に目標に向かっている証拠である。とくに、会話における「個性」の2つの方向性、すなわち2つのタイプの性格、「頑固・強引型」と「迎合・優柔不断型」を会話のプロットとして作成できたことは、来年度以降の研究の確かな基盤となると判断できる。したがって、以上から、ペッパーの価格高騰によって2台目以降の購入が困難となり、今後、その面での研究計画に若干の修正が必要になってくるとはいえ、全体として、「おおむね順調に進展している」と判断した。
今後の基本計画に変わりはないが、複数のロボット相互によるインタラクション実験の計画は、2台目以降のロボットを購入する目処が立たないので、どうしても後退せざるをえない。それ以外については、会話状況に的を絞り、被験者とのインタラクション実験を進めることで、「個性を持つロボット」の認知行動プログラム開発を加速化できる見込みである。とくに平成28年度以降は、自分たちのペッパー(名は「かいと」)に、性格として「頑固・強引型」と「迎合・優柔不断型」に対応する会話プロットを作成したことを受け、被験者(人間)とのインタラクション実験を継続することで、会話状況から把捉できる「個性」を明確化し、それによって「個性」概念の再構築を進める予定である。その際、会話プロットに用いる性格をさらに追加し、例えば「懐疑・不安型」などの開発も有効であろう。いずれにせよ、「個性概念の再構築」と「<ロボット-被験者>インタラクション実験」との相互生産的往還が、今後の研究の推進方策となる。
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