研究課題/領域番号 |
15H03154
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
平井 靖史 福岡大学, 人文学部, 教授 (40352223)
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研究分担者 |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20303795)
合田 正人 明治大学, 文学部, 教授 (60170445)
安孫子 信 法政大学, 文学部, 教授 (70212537)
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
藤田 尚志 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (80552207)
金森 修 東京大学・大学院, 教育学研究科(教育学部), 教授 (90192541)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 哲学 |
研究実績の概要 |
国際協働を型とする哲学研究を次の段階に引き上げるべく、また、ベルクソンの主著『物質と記憶』固有の学際的アプローチに対応するべく、従来までのフランス語ではなく英語使用による国際シンポジウムを2015年12月に開催し、英語圏の研究者・非フランス哲学系の哲学者を交えた新しい共同研究形態を構築した。具体的には、いわゆるベルクソン研究者としても科学哲学に造詣の深いポール=アントワヌ・ミケル氏(仏)および相対論的時間論に通暁するエリー・デューリング氏(仏)以外に、現代分析形而上学における時間論哲学者としてバリー・デイントン(英)、伊佐敷隆弘の両氏、ギブソンのアフォーダンス知覚論の専門家としてスティーブン・ロビンズ(米)、河野哲也の両氏、現代の生命研究、心身問題研究、認知科学に携わる研究者(郡司ペギオ幸夫氏、ジョエル・ドルボー(仏)氏、セバスチャン・ミラヴェット(仏)氏)、また当時の記憶研究の背景に詳しい三宅岳史氏など、『物質と記憶』での哲学的争点に深く関わる多様な分野の理論家たちを結集し、具体的個別の論点について深く掘り下げる討議を行った。 このことは単純に思想史研究を脱却して学際的研究を標榜するという一般的な意味以上に、じっさいに当時の実証科学から心身問題という哲学的難問に取り組んだ『物質と記憶』という書物の特性からして、不可欠なことであった。とくに、最新の神経科学や分析形而上学の知見に照らし合わせることで、これまでなされなかった水準の徹底的な批判的検討を行った点は特筆に値する。その成果は目を見張るもので、海外研究者たちからも高い評価を得、ミケル氏・デューリング氏によって新しいベルクソン研究を謳う宣言文が寄稿され、フランス本土でも新たな枠組みが立ち上げられるにいたった。なお日本語版および英語版の論集出版に向けて、すでに着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」で触れたように、非ベルクソン専門家を多く招き、英語によって議論をする今回の形式は、従来とまったく異なる新しい試みであり、ともすれば議論の深化を妨げるリスクも懸念されたが、発表者・事前の原稿共有や、特定質問者による共通論点の析出など、より実質的で効率的な議論深化のための方策も功を奏し、またなにより『物質と記憶』の現代的重要性に関して認識を共有する各専門家の熱意ある貢献のお陰で、シンポジウムは大きな成果を収めた。現在準備中の論集も、シンポジウムでの議論を採録するのみならず、それに触発された上述宣言文、新規論考・コラム・リプライ論文などを含めた形になる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成功を継承しつつ、この流れを軌道に乗せるためにも、本年度も昨年度に劣らぬ成果を出すことが不可欠である。同じく英語を基調言語とし、国際的・学際的な協働研究のあり方を質的により洗練させていく。本年度は現時点で、昨年に引き続きバリー・デイントン氏、同じくイギリスから複雑系科学からベルクソンを読み解く単著を昨年出版したばかりのデイヴィッド・クレップス氏、フランスから『物質と記憶』校訂者であるカミーユ・リキエ、国際的に活躍する医師でありながら病理の観点から心身問題に深い関心を寄せる兼本浩祐氏、時間論の観点から脳神経を研究する太田宏之氏、日本を代表する若手ベルクソン専門家である村山達也氏などの参加が決まっている。入念な準備を重ねることで、『物質と記憶』の現代的射程を最大限に引き出せるよう努める所存である。
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