研究課題
1. 国際共同研究となるスカンダプラーナ第4巻の校訂研究に関しては、第88-95章までの校訂とシノプシスの作成、第75-79章の改訂を行い、9月にライデン大学、3月に京都大学において集中的な検討会を行った。特に第94章では、シヴァを信じ正義を守る王としての魔神というモチーフが明確にされており、この巻の他の章も含めて、世界の秩序を保つための魔神討伐を主とするヴィシュヌ神話に対し、シヴァ神話では魔神の扱い方が決定的に異なることが明らかになった。また上記の研究会では、本文献を主材料として博士論文を執筆中の学生3人が各々の研究成果を報告し、文献の編纂過程、先行文献との関係についてより深い知見を得ることができた。2. 「初期ヨーガ・サーンキヤ史の再検討」については、7月と12月に研究会を開催し、Pasupatayogavidhi第2章、Yogayajnavalkya第2章、Yogavivarana1.7と3.52について各担当者が作成した校訂テキストをもとに討議を行った。そのほかに、シヴァ教の世界形成論を扱うRatnatrayapariksaの講読、叙事詩における初期サーンキヤ・ヨーガ説に関する研究成果報告、仏教におけるサーンキヤ批判の報告も扱った。Pasupatayogavidhiに関しては、共同研究者であるBisschop博士とともに、9月に開催されたヨーガの国際ワークショップにて発表を行った。その成果の一部であるパーシュパタ派のヨーガの定義に関して現在論文を執筆中である。さらに9月に開催されたシヴァダルマ文献群のワークショップに参加したことで、パーシュパタ派のサーンキヤ説の発展過程をPasupata-sutra→SkandapuranaのPasupatayogavidhi→シヴァダルマ文献群の中のShivadharmottaraという順に追うことができることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本課題の中核部分である神話・神話生成研究のうち、スカンダプラーナ第4巻の校訂研究に関しては、計画以上に順調に進んでいる。ライデン大学のビショップ教授のプロジェクトとの協力関係も順調であり、この共同研究の一環として、同文献の一部を主資料とする3人の院生(ライデン大学、ハンブルグ大学、ソルボンヌ大学)および叙事詩における初期ヨーガ・サーンキヤを扱う院生(京都大学)の博士論文の研究指導も行っている。神話の語りに関するシヴァ神話とヴィシュヌ神話の比較に関しても、同文献の共同研究を通して考察を深めることができている。さらにシヴァダルマ文献群に関するワークショップに参加した結果、29年度からはこの文献群の中で2番目に古いシヴァダルモッタラの校訂に加わることになり、今後の研究に新たな展望を加えることができた。本文献群は大部分が未出版であるが、本課題が扱う在家信者を主対象とするシヴァ教とヴィシュヌ教の比較研究には必須の資料である。初期ヨーガ・サーンキヤ史の再検討に関しても順調に進んでおり、関連分野の研究者を研究会にゲストとして招聘することで、少しずつ視野を広めることができている。ただし、上記の神話の語りの比較研究、およびパーシュパタヨーガ研究のどちらにおいても、これまでの研究成果を学会などで公表はしているが論文としてきちんとまとめることができていない。この点については、29年度に特別研究休暇がとれることになっているため、その間に遅れをとりもどす予定である。
1. スカンダプラーナ校訂研究については、5~6月にボードリアン図書館(オックスフォード大学)にて原写本等との最終校合を行い8月末までに校訂テキストの最終校を完成するともに、序章の共同執筆を行い、9月にライデン大学で開催される集中検討会にて序章を討議、第4巻の最終校を確定する。今年度中の刊行を予定している。引き続き第5巻の校訂研究チームを発足させ、3月の京都大学における研究会からは第5巻の共同研究に取り組む。並行して初期のシヴァ教とヴィシュヌ教各々の神話体系の比較を行い、29年度中にはこれまでの研究成果を論文としてまとめる。また、28年度に新たに研究対象に加えることにしたShivadharmottara第12章の校訂を開始し、そこにみられるシヴァ教の神話的世界構成をヴィシュヌ・プラーナのものと比較検討する。その最初の成果は9月に開催されるドイツ東洋学会第33回大会の関連パネルにて報告する予定である。最終年度(31年度)にはビショップ博士のプロジェクトとの合同シンポジウムをライデン大学にて開催する計画であり、現在その詳細を検討中である。2. 29年度には、1月に初期チャールキヤ朝の遺跡を中心とした寺院遺跡の調査を行う。30または31年度にはエローラでの調査を計画している。3. 「初期ヨーガ・サーンキヤ史再検討」については、これまでの活動を継続し、年に2回、ワークショップ形式の研究会を開催する。7月の研究会にはShivadharma文献群におけるヨーガを扱っているde Simini博士を招聘する。またRINDAS伝統思想研究会との共催で、7月にVerdon博士にアルビールニーのヨーガ経典のアラビア語訳に関する研究報告をお願いしている。今後は他の関連研究グループと協力して、ヨーガの伝統について視野を広げた上で、本課題の目的である初期の様相をその歴史の中に位置づける予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 図書 (1件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (3件)
Epigraphic Studies in South Asia: Proceedings of the WSC-16 Epigraphy. Ed. by D.P.Dubey. DK Publishers, Delhi.
巻: なし ページ: 印刷中
Journal of Indian and Buddhist Studeis
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Religion and Orientalism in Asian Studeis. Ed. by kiri Paramore. Bloomsbury Academic, London.
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https://kyouindb.iimc.kyoto-u.ac.jp/j/qI1pR
https://kyoto-u.academica.edu/YukoYokochi
http://hum.leiden.edu/lias/skandapurana-project/