研究課題/領域番号 |
15H03162
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
久保田 浩 立教大学, 文学部, 教授 (60434205)
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研究分担者 |
鶴岡 賀雄 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60180056)
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30208912)
前田 良三 立教大学, 文学部, 教授 (90157149)
江川 純一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (40636693)
渡辺 優 天理大学, 人間学部, 講師 (40736857)
阿部 善彦 立教大学, 文学部, 准教授 (40724266)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宗教学 / 宗教思想 / 知識社会学 / 概念史 / 系譜学 |
研究実績の概要 |
1 各自の成果の共有と課題の明確化。本年度は、昨年度までの成果を通して明確になってきた諸問題(mysticism概念の日本での受容・研究が日本社会の近代化過程と近代的学問の成立という文脈の中で帯びていた特殊性、19世紀以降の欧米における近代的学問の成立とmysticism研究の相関関係等)の検討を行った上で、それらを政治思想的文脈でも問い直し、新たな理論的問題提起(これまでの宗教思想の歴史的検討に基づき、広範な思想運動の中においてmysticismが占める位置を再検討する)へとつなげていった。(1)定例の研究会において、中世から近世にかけての西欧神秘思想の質的変容の文脈、19世紀・20世紀の転換期のスウェーデンにおけるナショナル・アイデンティティと神秘主義との関連、同時期のドイツにおける民族主義宗教と神秘主義の関連、第一次大戦後のドイツにおけるアナキズムと神秘思想との関連、の四つの観点から、「世俗的」政治思想の宗教思想性を明らかにしたことが重要な成果である。(2)本研究課題初年度の研究成果から生れてきた『宗教理論事典』(仮題)は2年目に編集方針が確定したが、本年度は小規模のワークショップと勉強会において、独自の宗教理論を展開してきたM・エリアーデをはじめとした宗教思想家について、メンバーのこれまでの研究を批判的に相互検討し、事典第一部を成す人名篇の具体化に着手できた。 2 初年度に行った国際シンポジウムの継続企画の実施。本年度は、現在のヨーロッパの宗教事情を背景とした宗教動向(一つはキリスト教研究の再興、二つ目は英国の無神論運動)とそれらに促された宗教思想形成、並びに韓国におけるmysticism概念の受容・研究史というテーマの下に計3回のワークショップを秋季に実施した。これは最終年度の国際シンポジウム実施に向けてのプレ企画としての意義を有するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 定期研究会と小規模のワークショップ・勉強会の実施。本研究課題はメンバーの個別研究とそれに基づく共同での情報共有並びに論点整理・理論化を両輪として成り立っている。この点については、本年度も昨年度までと同様に、年二回の定期的な研究会において、全体の問題提起並びに理論化と、各自の個別研究(事例研究と理論研究)との関連について十分に確認し、相互の批判的議論を踏まえて、分析の方向性の共有に成功している。更に宗教思想の理論化という課題については、前記『事典』のための小規模の勉強会を頻繁に開催しており、この点でも当初の予定通り研究が進捗していると判断できる。 2 国際シンポジウム・ワークショップ等の実施。昨年度中に、本年度の国際シンポジウムの実施計画を変更する必要性が明らかとなり、それに代えて三つのワークショップを実施した。本来今年度に行う予定であった、初年度実施の国際シンポジウムの継続企画は、来年度後半に実施することとし、本年度中に海外共同研究者と協議を重ね、具体的な計画の立案を完了した。故に、この点については、2年目に3年目以降の計画の変更を余儀なくされたものの、昨年度末から本年度にかけて計画の修正を行い、概ね当初の予定に則した研究の実施が見込まれている。 3 研究代表者・分担者・連携研究者の海外研究、並びに成果の一部の公表。前年度までと同様に本年度も、海外での研究動向の把握、海外共同研究者との研究体制の維持及び拡充の為に、フランス・イタリア・ドイツ等で引き続き海外研究を遂行している。また計画通り、メンバー各自の研究成果の一部を諸学会の学術大会等で発表し、公の批判に委ねており、研究課題全体への自己批判的フィードバックも積極的に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たることから、近代的宗教と近代的学問との概念形成上並びに思想形成上の相互関係について、これまでの事例・理論研究を総括することを目的に、以下の方策で研究を進めていく予定である。 1 これまでの定期研究会と勉強会・ワークショップにおいて明らかとなってきた諸問題の再検討を踏まえた上で、事例研究と理論研究との有機的統合を共同の議論を通して集中的に進める。これまで通り、年2回の定期研究会で包括的な研究報告・提題を行う。そして、小規模の勉強会とワークショップを計4回実施し、宗教理論研究の方法論的・理論的検討を行い、前記『事典』の進捗を図る。 2 今年度のプレ企画を通して準備してきた国際シンポジウムを次年度下半期に東京で行い、本研究課題の総括的成果の一部の公表の場とする。 3 以上の2点を進捗させる為に、特に年度後半の国際シンポジウム実施の具体的準備として海外共同研究者との間で進行している共同研究の一層の進展の為に、前年度までと同様に海外研究を行う。
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