研究課題
平成29年度における彫刻文化財調査は、下記の像を対象に実施した。・熊本県明導寺阿弥陀三尊像(寛喜元年〈1229〉)・京都府平等院雲中供養菩薩像北7号(天喜元年〈1053〉)熊本県明導寺阿弥陀三尊像調査では、特に両脇侍像(観音・勢至)について写真測量および透過X線撮影を行うことができた。透過X線撮影には、現場で画像確認が可能かつ可搬性のある機材を用い、高精細な画像を取得することができた(東芝メディカルシステムズ社製ポータブルX線撮影装置DyRO-X petiteおよびゼネラル・エレクトリック社製CRxFlexを使用。第1回調査では現地のAC電圧が安定せず撮影に失敗したものの、第2回調査で変圧器を使用するなどの対策をとることで撮影することができた)。この調査において、これまで手がかりが少なかった明導寺両脇侍像の構造を推定することができた。透過X線画像によると、観音菩薩像は腰布と裙の境目、および足まわりに多数の釘(ただしほとんどは後補)や水平に走る矧ぎ目が認められた。これらは別材矧ぎもしくは割矧ぎによるものと考えられるが、一方の勢至菩薩像には腰布・裙付近に特別な工作の跡は認められなかった。また内刳りに関しても、観音菩薩像は極めて薄い箇所が多く一部に貫通したかともみられる部分がある一方、勢至菩薩像の内刳りは整然とし肉厚なものであった。これらの違いは、担当した仏師の気質による部分も大きいであろうが、阿弥陀如来を取り巻く一具の像として制作されたであろう造像事情を考えると、制作工程上の何らかの意味があった可能性が考えられた。これらの知見を総括するため、X線による像内部の構造情報と3Dデータによる情報などをもとに、立体的に構造・技法を把握できる3DCG構造図作成を試みた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。