研究課題/領域番号 |
15H03173
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 義孝 筑波大学, 芸術系, 教授 (10198252)
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研究分担者 |
田中 佐代子 筑波大学, 芸術系, 准教授 (10326415)
武末 裕子 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10636145)
松尾 大介 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (50377230)
宮崎 甲 千葉大学, 教育学部, 教授 (60272291)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 造形表現 / 彫刻 / 蝋型美術鋳造法 / ブロンズ / イタリア |
研究実績の概要 |
蝋型石膏鋳型鋳造法の特質を活かした新しいブロンズ彫刻表現の可能性について、研究分担者各自のテーマに基づいて実制作をもって実証する試みが着手された。中村義孝は、「蝋を直接造形する方法による表現の可能性」を課題とし、発砲スチロールを心材とした蝋直造り法で、具象的表現を追求した。研究成果としての作品(木枯らしの吹く中/ブロンズ、h.200×w.55×d.45㎝)は第61回一陽展(国立新美術館/東京)に発表した。宮崎甲は、燃焼他素材を中心に実験的な制作をおこなった。作品(星降る/ブロンズh.120×w.40×d.39(㎝),)は個展(ギャラリーせいほう/東京)に発表した。松尾大介はブロンズと異素材を結合する方法について実証的に考察した。作品(elemento/ブロンズ、桜、杉h.145×w.33×d.33㎝)は第38回国画会彫刻部秋季展(東京都美術館)に発表した。武末裕子は「触覚感覚を生かした蝋型石膏鋳造の表現の可能性」を課題とし、植物と抽象形態をを組み合わせたブロンズ彫刻表現を追求した。作品(うすらい/ブロンズ、h.50×w.45×d.45㎝)は山梨県立美術館企画の個展に発表した。また、中村、松尾はF.A.R鋳造所(ローマ)、バッタリア鋳造所(ミラノ)等の鋳造所において調査、及び技法についての意見交換を行った。蝋型鋳造の特質を活かした表現を行った現代の彫刻家クロチェッティ、マリーニ、マンズーの現地調査が各分担者によって開始された。2016年2月20日に研究例会を筑波大学芸術系棟で開催し、研究経過の報告として中村、宮崎、松尾、武末が発表を行い、特別研究発表として東北芸工大学保田井智之教授が「造形としてのブロンズ比重」のテーマで講演を行った。約50名が参加し活発な質疑応答がなされた。田中佐代子は蝋型鋳造工程をわかりやすい図にビジュアルデザイン化する研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イタリア式蝋型鋳造彫刻の特質を活かした表現については、分担者が各自のテーマに基づき、それぞれの制作法により着々と成果を上げつつある。研究の成果は、公募展や個展等で発表され社会的にも評価されている。中村は発泡スチロールの芯材に蝋板をはり蝋直付け法で具象表現を追求した。宮崎は蝋及び燃焼可能な他素材を組み合わせた原型制作を実験的に行った。松尾はブロンズに異素材を結合する方法を実証的に考察した。武末は植物から型取りした蝋と抽象形態を生かした板蝋を組み合わせた彫刻表現を追求した。イタリア式蝋型鋳造法の基本的技法の解明についてはF.A.R鋳造所(ローマ)、バッタリア鋳造所(ミラノ)等の鋳造所や、フィレンツェ国立美術院教授(彫刻家)等との意見交換や現場の調査が進められている。また、蝋型鋳造の特質を活かした表現を行った現代の彫刻家クロチェッティ、マリーニ、マンズーの現地調査が各分担者によって開始された。研究例会も開催され海外の研究者の交流も行われ、蝋型鋳造彫刻の研究の一拠点として認識されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
蝋型石膏鋳型鋳造法の特質を活かした新しいブロンズ彫刻表現の可能性については、研究分担者が、昨年度に引き続きそれぞれの課題に基づきさらに深化させていく。また、イタリア式蝋型鋳造法の基本的な技法を明らかにするため、イタリア国内で伝統的な技法を駆使し鋳造を行っている鋳造所の調査も昨年度に引き続き行い、本年度はマフ鋳造所(ミラノ)も加える。さらにイタリア現代彫刻家の中から蝋型ブロンズ彫刻表現に独自の境地を開いた彫刻家を絞り込んで調査対象とし、蝋型鋳造と彫刻表現について考察する。昨年度はクロチェッティ、マンズー、マリーニの各彫刻家の現地調査が始まったが、今年度からはロッソの現地調査も開始する。研究例会を開催し研究分担者の研究経過発表に加え、海外からの発表者も招待し、研究ネットワークの更なる拡充を目指す。
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