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2018 年度 実績報告書

日本近代における〈イコノクラスム〉―破壊をめぐる視覚表象研究

研究課題

研究課題/領域番号 15H03179
研究機関早稲田大学

研究代表者

丹尾 安典  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00129058)

研究分担者 谷田 博幸  滋賀大学, 教育学部, 教授 (10179848)
安松 みゆき  別府大学, 文学部, 教授 (40331095)
志邨 匠子  秋田公立美術大学, 大学院, 教授 (00299926)
河田 明久  千葉工業大学, 工学部, 教授 (90277781)
奥間 政作  早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (40711213)
向後 恵里子  明星大学, 人文学部, 准教授 (80454015)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワード日本近代美術史 / 表象文化論 / イメージ論 / 視覚文化論 / イコノクラスム / 破壊
研究実績の概要

本研究は、日本の近代における美術・視覚文化・表象文化の様々な局面における〈イコノクラスム〉、すなわちイメージの破壊の様態を明らかにし、さらにその破壊のイメージが社会のなかで果たした意義を考察するものである。本研究の中心的な考察の対象は、近代日本におけるイメージの破壊をめぐる様々な事象であるが、イメージの破壊を扱う本研究においては、「近代」および「日本」の意味するところもまた問い直される必要がある。また、問題意識の前提として、今日の社会において展開している破壊の様相をとらえ、研究の現代的意義を積極的に見出だすことにつとめながらすすめている。
2018年度は研究の4年目として、各分担者・協力者個々の研究をすすめつつ、2回の公開研究会を開催した。まず7月の第7回研究会では分担者である奥間政作(早稲田大学)が「慰霊碑の記憶―死者をめぐるかたちの諸相」を、協力者の岡戸敏幸(早稲田大学)が「燬くこと/毀つこと―祝賀と浄化の心性」と題した報告を行った。奥間の報告では戦争の惨禍の記憶が数々の慰霊碑として結実してゆくことの多角的な分析がなされた。岡戸の報告では断碑や焼身といった近世以降の破壊をめぐる肯定的でもある心の動きをとらえながら、その思想について考察された。
12月の第8回研究会では、喜夛孝臣(練馬区立美術館)による「検閲と転向――プロレタリア美術運動における二つの破壊について」、安松みゆき(別府大学)による「ドイツ第三帝国時代の美術をめぐる2017年の展覧会動向」の二つの報告がなされた。喜夛はプロレタリア美術における〈イコノクラスム〉の事例として検閲による撤回、転向による忘却をとりあげ、その破壊の様相を分析した。安松は2017年に開催されたドイツ第三帝国期をテーマとした展覧会を事例に、その歴史展示の変容について考察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記概要に記載した通り、本年は当初の計画通りに夏冬2回の研究会を開催することができた。また代表者・分担者間の協同体制や、多くの参加メンバーへの連絡など研究の管理遂行を含め、研究体制を維持しながらスムーズに研究を遂行することができたため、おおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

最終年度である2019年度は、これまでと同様に研究会の開催と構成メンバーによる個別の資料調査・現地調査を基礎として、さらに参加者相互に協力しながら研究をすすめ、成果を積み重ねるほか、国際シンポジウムを開催し、報告書をまとめる。推進の計画は以下の通りである。
・国際シンポジウム、公開研究会および会議の開催(夏・冬の2回): 第9回の研究会として、7月20日に早稲田大学を会場として国際シンポジウムを開催する。冬には総括をかねて第10回の定例研究会を開催する。研究会では、分担者・研究者のみならず、ひろくゲストスピーカーや外部の協力者を招き、また一般の参加者にも公開して社会への還元をはかる。また研究会と同日に分担者・協力者とともに研究の進展と情報の共有、今後の方針などの打ち合せのための会議を行い、調整をはかる。
・関連論考の学会における学術発表: 本研究プロジェクトでの成果を、参加者各位が自身の所属する学会・研究会などで成果を発表する。
・現地調査: 研究の進展にともない、破壊を経験した場所へ、各メンバーの関心にしたがって現地調査および共同調査を行う予定である。
・これまでの成果として、分担者・協力者およびシンポジウムのパネリストが論考を執筆し、報告書をまとめる。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 「ピーポーとは何か」を考える手がかりの5章2019

    • 著者名/発表者名
      河田明久
    • 雑誌名

      ART RAMBLE

      巻: 62 ページ: 4-5

  • [雑誌論文] 戦後ドイツの脱ナチ化をめぐって 2017年度開催の展覧会を事例に(3)2019

    • 著者名/発表者名
      安松みゆき
    • 雑誌名

      別府大学紀要

      巻: 60 ページ: 1-13

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] くず拾い2019

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      一寸

      巻: 77 ページ: 67-74

  • [雑誌論文] 秋艸堂拾遺記2019

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      早稲田大学會津八一記念博物館紀要

      巻: 20 ページ: 65-71

  • [雑誌論文] 書を再視するためのノート2019

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      早稲田大学會津八一記念博物館紀要

      巻: 20 ページ: 128-137

  • [雑誌論文] 収集から接収へ ― 占領期の戦争画2018

    • 著者名/発表者名
      河田明久
    • 雑誌名

      『没後50年 藤田嗣治展』図録

      巻: -- ページ: 155

  • [雑誌論文] フジタの世代2018

    • 著者名/発表者名
      河田明久
    • 雑誌名

      『藤田嗣治 戦時下に書く 新聞雑誌寄稿集 1935~1956』(林洋子 編)ミネルヴァ書房

      巻: -- ページ: 245-277

  • [雑誌論文] 書評:田中修二『近代日本彫刻史』2018

    • 著者名/発表者名
      河田明久
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3362 ページ: 5

  • [雑誌論文] 武井守正のこと2018

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      一寸

      巻: 74 ページ: 57-66

  • [雑誌論文] 灰皿と手のはなし2018

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      一寸

      巻: 75 ページ: 60-69

  • [雑誌論文] せごどん拾遺2018

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 雑誌名

      一寸

      巻: 76 ページ: 60-68

  • [学会発表] 戦時・占領期における書教育2018

    • 著者名/発表者名
      志邨匠子
    • 学会等名
      早稲田大学文化芸術週間 2018年度シンポジウム:「書」を再視する
  • [学会発表] 基調講演「書を再視するためのノート」2018

    • 著者名/発表者名
      丹尾安典
    • 学会等名
      早稲田大学文化芸術週間 2018年度シンポジウム:「書」を再視する
  • [学会発表] 慰霊碑の記憶―死者をめぐるかたちの諸相―2018

    • 著者名/発表者名
      奥間政作
    • 学会等名
      日本近代における〈イコノクラスム〉――破壊をめぐる視覚表象研究 第7回公開研究会
  • [学会発表] 燬くこと/毀つこと―祝賀と浄化の心性ー2018

    • 著者名/発表者名
      岡戸敏幸
    • 学会等名
      日本近代における〈イコノクラスム〉――破壊をめぐる視覚表象研究 第7回公開研究会
  • [学会発表] 検閲と転向――プロレタリア美術運動における二つの破壊について2018

    • 著者名/発表者名
      喜夛孝臣
    • 学会等名
      日本近代における〈イコノクラスム〉――破壊をめぐる視覚表象研究 第8回公開研究会
  • [学会発表] ドイツ第三帝国時代の美術をめぐる2017年の展覧会動向2018

    • 著者名/発表者名
      安松みゆき
    • 学会等名
      日本近代における〈イコノクラスム〉――破壊をめぐる視覚表象研究 第8回公開研究会
  • [学会発表] 惨たる死のメモラビリアとスペクタクル――日露戦争と尼港事件を題材として2018

    • 著者名/発表者名
      向後恵里子
    • 学会等名
      第3回東アジア日本研究者協議会国際学術大会、分科会3、C3自由発表パネル「近代東アジアにおける戦争・植民地・労働」
  • [図書] 国家はいかに「楠木正成」を作ったのか2019

    • 著者名/発表者名
      谷田 博幸
    • 総ページ数
      352
    • 出版者
      河出書房新社
    • ISBN
      4309227570
  • [図書] 男色の景色2019

    • 著者名/発表者名
      丹尾 安典
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      KADOKAWA
    • ISBN
      4044004609

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公開日: 2019-12-27  

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