研究実績の概要 |
最終年度である平成30年度は、「バラッド文化の継承とその可能性」と題し、メンバー4名によるシンポジウムを日本英文学会第71回九州支部大会(10月21日)にて行なった。またメンバー1名は「第48回国際バラッド学会(プラハにて)」に出席、その後アイルランド国立博物館、国立図書館で資料収集を行なった。各メンバーの活動内容は以下の通り。 三木:アイルランドの出版事情とバラッド文化を調査していく中で、Jack B. Yeatsがブロードサイドを11年にわたり企画・制作・出版していたことがわかり、その制作活動を、アイルランドのアーツ・アンド・クラフツ運動との関係で考察・検討した。中島:19世紀以降のブロードサイド・バラッドとは「バラッド」という言葉を軸として拡散拡大してゆく文化現象であることをチームとしてまとめるという課題が設定されたため、「ブロードサイド・バラッドとは何か」を発生、展開、特色等から明確にする作業を行った。また、PlomerとBetjemanのバラッド詩が、ブロードサイド、新聞、雑誌、パフォーマンス等のメディアを介して確立されてきた「民衆の詩」の伝統の中に位置付けられることを検証した。宮原:Lafcadio HearnのKokoroをはじめとする著作や、Georges Bigotのバラッド集Yokohama Balladsに見られるブロードサイド・バラッド的特徴を検証し、彼らの作品が明治時代の日本という異文化の中で、ヨーロッパのバラッド文化を再現した貴重な例であるという結論に至った。鎌田:奴隷制廃止をテーマにしたバラッド詩の中から、対象とする読者の異なるWilliam Cowper, Hanna More, Amelia Opie, Robert Burnsの作品を選び、社会問題を扱ったバラッド詩がどのような特徴を持ち、どのように社会に働きかけていったのかを検証した。
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