研究課題/領域番号 |
15H03193
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
井上 暁子 熊本大学, 文学部, 准教授 (20599469)
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研究分担者 |
小椋 彩 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (10438997)
野町 素己 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (50513256)
阿部 賢一 立教大学, 文学部, 准教授 (90376814)
越野 剛 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (90513242)
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多言語性 / 記憶 / 移動 / マイノリティ / 美術 / 映画 / 文化遺産 / 作家インタビュー |
研究実績の概要 |
阿部は、20世紀初頭のウィーンとプラハの美術交流について研究を進め、論文を執筆したほか、モラヴィア・シレジアの多言語空間が生んだ文学作品についての予備研究を進めた。井上は、ポーランド系ドイツ語作家の文学について、対象を移民第一世代から第三世代の作家に広げて研究を進め、報告を行った。失われた多言語空間やその記憶の描かれ方という観点から、彼らの紀行文学を論じる研究に着手した。小椋は、ポーランドのドキュメンタリー映画や文学作品を題材に、現代ポーランド文化における「移動」のテーマについて学会報告を行い、論文としてまとめた。パリの亡命ロシアと亡命ポーランド間の交流について学会報告を行い、海外の研究者と意見交換した。加藤は、ガリツィアの文化遺産や多言語的記憶の保存の現状について調査、報告を行った。同地を中心に活躍した作家の活動について、一般向けの東欧文学のガイドブックに寄稿したほか、論文としてまとめた。さらに、20世紀初頭のポーランドの前衛文学・美術を他の国・言語圏の文学・美術との関連性で再考する研究に着手した。越野は、イディッシュ、ロシア語、ベラルーシ語の3言語を使用した詩人レレスを中心にして、多言語的トポスであるベラルーシにおける文学史の叙述の問題を考察した。またチェルノブイリ原発事故の記憶とベラルーシ文学との関係についても研究を行った。野町はカシュブ文学および東スラヴ系マイノリティの文学作品の収集を行った。加えて、インターネットを通じ、作家にインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研では、東欧文学の多言語性を地域の固有性、文学作品に見出しうる言語的背景、国際的流通によって開かれる現代文学のあり方といった様々なレベルで捉え、それらの相互関係を検証する。「地域の多言語性」については、言語の混成化が進んだ東欧の諸地域における様々な創作のあり様が個別に調査されている。亡命者、移民、言語的マイノリティ、複数言語で創作する作家と文学史叙述との関係も検討されている。「流通するテクストと〈東欧〉イメージの生成・変容」については、文学、映画、美術を通した文化の国際的受容と流通に着目した研究が進められている。「中間的アイデンティティ」については、文化遺産、多言語的記憶の保存についての調査が進んでおり、西欧中心の「ヨーロッパ・イメージ」を相対化する動きにも目が向けられている。また、チェルノブイリ原発事故や追放を題材とした文学を通して、記憶と文学の関係についても論じられている。作家インタビューの公表の準備も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、シレジアの多言語性・多文化性について現地調査を行うほか、第6回世界ポロニスト会議や学際的ポーランド研究のシンポジウムなどに参加し、海外の研究者と交流を深め、今後の研究につなげる。年度末には、日本スラブ学研究会でパネルを組織し、本共同科研プロジェクトの中間報告を行い、その際これまでに行ってきた作家インタビューの一部を解説つきで上映する。来年度は、海外から研究者を招いて国際シンポジウムを開催し、最終年度はその報告集(欧文)を刊行する。
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備考 |
Perspectives on Contemporary East European Literature: Beyond National and Regional Frames (Kenichi Abe eds.)
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