研究課題/領域番号 |
15H03199
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
今野 喜和人 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70195915)
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研究分担者 |
大薗 正彦 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10294357)
安永 愛 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10313917)
山内 功一郎 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (20313918)
ローベル 柊子 (田中柊子) 静岡大学, 情報学部, 准教授 (20635502)
田村 充正 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30262786)
南 富鎭 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30362180)
花方 寿行 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70334951)
桑島 道夫 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80293588)
Corbeil Steve 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (80469147)
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80515411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 翻訳論 / ポストメディア / 比較文学文化 / 芸術論 |
研究実績の概要 |
人間のことばが生まれて以来行われてきた「翻訳」の営みは、現代におけるグローバリゼーションとIT革命によって、量的にも質的にも大きな変貌を遂げている。20世紀における英語の一極支配と機械翻訳の登場によって早晩衰退するかに思われた人間の翻訳活動は、むしろ日常の生活において以前よりも積極的な役割を果たすようになり、様々なメディアにおける従来の枠組みの変容・崩壊・統合と相互に影響を与え合いながら、今世紀に入って文学研究はもとより、言語学、カルチュラル・スタディーズ、哲学、美学や批評理論の中心的な課題となりつつある。本研究は「ポストメディア時代」とも称される現代において、文学や芸術における翻訳の持つ意味を重層的・学際的・国際的に考察することで、新たな詩学の可能性を開こうとするものである。 分析の出発点となる理論・学説の確認を行うことに力を注いだ初年度、ポストメディア現象の広がりについて調査した2年目に引き続き、平成29年度は分担者が各自の研究を深めるよう努めた。研究会では分担者による発表以外に、研究者・創作家を招いて一般公開の研究会・講演会も開催した。7月にはアンドレア・チェッリ(イタリア)、12月にはシルヴィ=アンヌ・メナール(カナダ)、1月には町田康の各氏を招聘した講演会は、多くの学生・一般市民の参加を得た。 研究会メンバーが中心になって執筆・編集している研究誌『翻訳の文化/文化の翻訳』は第13号を発行し、今年度の研究成果の一部を掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外での文献・映像資料の収集は精力的に進んでおり、これまでの成果に関する論文・学会発表も順調に行われている。定例研究会における分担者の発表の他、一般市民も対象にした講演会も3回を数え、多くの聴衆を集めることができた。 今回のメンバーの大半はこれまで平成20~22年度基盤研究(C)「恋愛・結婚をめぐる異文化交流・翻訳の諸問題」、平成24~26年度基盤研究(C)「翻訳の〈倫理〉をめぐる総合的研究」、そして平成27~30年度にかけて行われてきた研究によって相当の研究蓄積を行ってきたため、これらの集大成となるべき研究書を平成30年度中に発刊することを決定し、平成29年度中に既に論文草稿を纏めている。仮のタイトルとしては『翻訳とアダプテーションの倫理』とし、前回平成24~26年度の「倫理」研究と、今回の「ポストメディア」研究を総合した内容となる予定である。現在最終的な読み合わせ、出版社との交渉、所属学部内出版助成の準備を行っている段階である。 このような理由から、今後の最終的課題達成に向けて、順調な進捗が行われていると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗状況の欄にも記載したように、メンバーの大半を分担者とする広義の「翻訳」をテーマとした科研費研究は3回を数え、都合10年以上に及ぶ共同研究を通じて、当該研究およびその周辺のテーマに関して実績を積んできたため、これらを集大成する形で研究書を出版することに決めた。既に論文草稿は提出され、今後の読み合わせ、編集作業を経て、平成30年度中には出版の予定である。年度末には当該論集の出版を記念した講演会もしくはシンポジウムを一般公開で開催して当該研究の締め括りを行いたい。 一方で、新たな視野の拡大の必要性も感じられてきた。具体的には、翻訳やアダプテーションに関する著作権問題や権力による検閲・介入、政治的対立等が研究会においても盛んに論議されているため、今後は法律および政治学の研究者、さらには出版の歴史に詳しい専門家も加えてより学際的な研究会を組織し、平成31年度開始の新たな科研費申請を目指して議論を重ねていくことに決めている。
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