研究課題/領域番号 |
15H03208
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
藤井 洋子 日本女子大学, 文学部, 教授 (30157771)
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研究分担者 |
片岡 邦好 愛知大学, 文学部, 教授 (20319172)
早野 薫 日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
井出 祥子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60060662)
片桐 恭弘 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60374097)
堀江 薫 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70181526)
植野 貴志子 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (70512490)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 場の語用論 / 解放的語用論 / ミスター・オー・コーパス / 中国語データ分析 / 文化と言語使用シリーズ / Pragmatics of Ba / 非西洋言語文化 / 言語・文化・相互行為の多様性 |
研究実績の概要 |
本年度も平成27年度に引き続き、「場」の概念に基づく「場の理論」を援用し、世界各地の言語使用に見られる文化的特殊性を、通言語的かつ体系的に解釈するための汎用性のある「場」の語用論理論の確立と知見の体系化を目指して活動を行った。具体的には、第21回国際社会言語学シンポジウム(スペイン・ムルシア大学)におけるパネル(“Tracing sociocultural and perceptual schemas of non-western interactional practices”) にて、研究代表者、研究分担者、海外研究協力者が研究発表を行った。また、8月には中国語データ収集を行った北京林業大学の海外研究協力者、祝葵氏を招き、これまで収集してきたミスター・オー・コーパスの研究を中心とするワークショップおよび中国語のデータ分析セッションを開催した。ワークショップでは、本研究課題で2004年より収集してきたミスター・オー・コーパスデータを分析し、研究を行ってきた若手研究者による研究発表、中国語母語話者として中国より招聘した祝葵氏、さらに、中国語の語用論実践に詳しい井上優氏を招聘し、講演を行った。また、平成28年3月に収集した中国語データを分析するデータセッションを行い、その後の分析に有用な共通理解の構築を行った。 一方、世界の言語研究者に向けて「場の語用論」の必要性と有効性を訴えるために進めているPragmatics of Ba(仮題)論文集(John Benjamin社)刊行に向けて引き続き論文を執筆している。また、ひつじ書房からシリーズ「文化と言語使用」(井出祥子・藤井洋子監修)の第2巻『場とことばの諸相』(井出祥子・藤井洋子編)の出版に向けて研究分担者は場の語用論を用いて論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間3年以内に行う研究について、申請時に掲げた目標のうち、1)Culture and Language Useシリーズの一巻としてPragmatics of Baの出版があげられるが、それに向けて、昨年度末には編集主幹を迎え、より具体的な編集計画を立てることができた。ただ当初の平成29年4月の原稿締め切りについては、執筆者の厳選やそれぞれの状況を鑑み、平成29年9月を締め切りとすることになった。2)平成27年度3月に収集した中国語のデータの一部の文字化を行い、それをもとに中国語母語話者、中国語研究者を交え、データ分析セッションを行った。これにより、残りの中国語データの文字化処理を進めることが可能になった。3)論文集『場の語用論』(仮題)(「シリーズ 文化と言語使用」第2巻 ひつじ書房)の刊行が決定し、それに向けて、各執筆者が執筆を行っている。4)「場」の語用論のモデル化、及び、「場」の語用論の方法論の確立に向けて、今年度は特に中国語を中心とし、海外研究協力者を迎え、意見交換・研究発表を行うことができた。これまでのデータ収集において、アジアの言語である日本語、韓国語は収集しながらも、中国語については未収集だったことが課題であったが、27年度末にその収集が実現し、今年度、データの一部の文字化ができたことはこの研究課題のデータコーパスとして大きな進展だったといえる。引き続き、残りの部分の文字化を行い分析のための整備を行っていく。このように、本年度も東西/南北の分断を止揚した普遍的なモデルとしての「場」の語用論モデル構築に大きな一歩を踏み出すことができた。これらのことから、平成28年度は3年以内に行う研究の到達点に向かって順当に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の進捗状況は上記の通りであり、平成29年度に向けて、引き続き以下の課題に取り組む。1)論文集『場の語用論』(「シリーズ 文化と言語使用」第2巻 ひつじ書房)の刊行に向けて、研究代表者、研究分担者は執筆を行う一方、論文の査読、編集作業を行う。2)研究代表者、研究分担者、海外研究協力者は平成29年9月の締め切りに向けて、John Benjamins社のCulture and Language Useシリーズの一巻として出版予定のPragmatics of Baのための論文執筆を行う。3)本年度は、平成27年度3月に収集した中国語のデータの一部の文字化を行ったが、平成29年度は、このデータの文字化をより精緻な形に整備する。 研究の口頭発表としては、7月16日~21日に連合王国のベルファストで開催される国際語用論学会でのパネル “Emancipatory Pragmatics: Approaching Language and Interaction from the Perspective of Ba” を組み、研究代表者、研究分担者および海外研究協力者が研究発表を行う。その他、国内学会での発表も行う予定である。また、3年間の研究の最終年度にあたるため、総括の研究会を開催し、場の語用論の構築をより具体的なものにしていく。
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