研究課題/領域番号 |
15H03218
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
馬場 良二 熊本県立大学, 文学部, 教授 (30218672)
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研究分担者 |
和田 礼子 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10336349)
飯村 伊智郎 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (50347697)
大山 浩美 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 研究員 (00590126) [辞退]
大庭 理恵子 熊本県立大学, 文学部, 講師 (80618009)
吉里 さち子 熊本大学, グローバル教育カレッジ, 特定事業教員 (20544448)
田川 恭識 神奈川大学, 経営学部, 講師 (00645559)
嵐 洋子 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (90407065)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 聞き取り学習支援システム / 地域語 / 熊本方言 / スマートフォン / 外国人にやさしい環境 |
研究実績の概要 |
各地方言語の音声、音韻体系は共通語のそれとことなっていて、聞きとりはたやすくありません。コミュニケーションの基本は相手が何を言っているかを聞き取るところから始まります。共通語と異なる音声を聞き、相手が質問しているのか、同意を求めているのか、説明しているのかすらわからなければ、コミュニケーションは断絶してしまいます。共通語の聞き取りにはすでに慣れている日本語学習者を対象に、生活者としての外国人が自律的に学べる学習教材をネット上、および、冊子+CD の形で作成し、スマートフォンで手軽に学べるようにするのが本研究の目的です。学習者、外国人、支援者、行政の多文化共生担当者のところへこちらから出向いて行って、試用してもらい、その使用法を理解してもらいます。学習者、外国人によりそい、自律的 に学べるよう支援します。 本研究では、地方言語として熊本市を中心とした熊本北部語をとりあげました。今年度は、その方言の音声的な特徴を先行研究によって調査し、また、熊本北部語話者、東京語話者が議論、本研究グループのこれまでの熊本北部語の音声データの解析をくわえ、音声特徴をリストアップしました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の研究計画では音声的特徴の研究を開始すると共に日本語学習者へのアンケート調査と音声データの分析を行うとしていました。計画は概ね達成されており、H28年度に向けての地盤を固めることができました。 音声的特徴の研究については「だれ→だる」に見られるようなそり舌音化や「こくご→こっご」のような促音化(有声子音の前の(狭)母音が促音化する現象)など事例を取り上げて議論しながら分析を進めました。 また、外国人が熊本で生活する中でどのようなことに困っているのかを具体的に把握するため熊本市在住の日本語学習者126名(男性91名、女性34名、無回答1名)に対しアンケート調査を行いました。(1)日常生活における熊本方言の聴取や使用の有無、(2)日本人からの日本語学習者に対する熊本方言使用の有無、(3)日本語学習者が感じている熊本方言の困難点、(4)熊本方言に対する学習ニーズについて調査しました。調査の結果、55.6%が「日本人から熊本方言で話しかけられる」、52.4%が「熊本方言の聞き取りに関して共通語より難しい」、56.9%が「熊本方言を勉強したい」と答えており、本研究が目指す方言聞き取り教材の必要性が明らかになりました。日本語学習者が方言で話しかけられる場面は「職場の人(全回答の42.4%)」「友人(同14.1%)」「近所の人(同11.8%)」でした。この調査は今後対象者を増やして実施し、教材化する項目の絞込みに活用する予定です。
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今後の研究の推進方策 |
音声的特徴の研究班では、熊本方言が「アクセントを弁別しない」ことを証明するという目的で聴取実験を行います。具体的には熊本方言版「北風と太陽」の録音を継続して行い、データを集め、これを共通語版(話し言葉)と比較し分析を進めます。 また、促音化、そり舌音化など、音変化の規則性について分析をおこないます。音変化の規則性を明らかにした上で熊本方言話者への調査を行い、その妥当性を検証します。先行研究にある記述を検証すること、語アクセントのない熊本方言における句音調、発話音調の機能と実態を解明することが最終目標です。 一方、聞き取り教材作成班では音声的特徴研究班の成果と、日本語学習者のアンケート結果を踏まえ、教材作成をすすめます。動詞の活用に表れる共通語とは異なる音変化や、文末形式に現れる熊本方言特有の音調などを聞き取るためには、どのような教材を作ればよいか検討します。 スマートフォンで使える試用版を作成し、県北を中心に各自治体の多文化共生担当者、各地域の日本語教室を対象に説明会を開き、改良点を洗い出します。さらに、本教材の使用前後で外国人の聞き取り力の変化を実験的に調査し、システムの有効性を評価します。国内外の関連学会で成果を発表して研究の精度を高め、教材に反映させます。冊子+C D 版を作成し、県内地方自治体、日本語教室、外国人支援団体に配布します。
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