研究課題/領域番号 |
15H03219
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
川村 よし子 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 教授 (40214704)
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研究分担者 |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
金庭 久美子 立教大学, ランゲージセンター, 教育講師 (60733772)
前田 ジョイス 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 教授 (90275800)
八木 真生 東京国際大学, JLI, 講師 (90782904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 読解支援 / 共生社会 / やさしい日本語 / 多義語 / コロケーション / 慣用表現 / Web環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成24-26年度基盤研究(B)で開発を進めてきたやさしい日本語書き換えシステムをさらに発展させ、多義語の意味の特定も可能なやさしい日本語による読解支援環境をWeb上に構築することを目指している。これによって、日本語学習者のみならず、日本在住の外国人および日本人の年少者や高齢者等、いわゆる日本語弱者にとって有用な読解支援を提供することが可能になり、共生社会の実現への手助けになるはずである。研究2年目に当たる平成28年度は、多義語の意味の決定パターンの抽出とそれに対応した「意味特定ツール」の開発を中心に行うとともに、多義語の書き換えリストの作成も継続した。「意味特定ツール」は、これまでの形態素解析による分析に加えて、慣用句への対応を可能にするために連語への対応を行った。具体的な研究は下記のとおりである。 a.書き換えリストの拡充:前年度収集した難易度の高い多義語に対してやさしい日本語による複数の書き換え候補を併記した書き換えリストの作成および各書き換え候補に該当する例文の収集を行った。 b.「意味特定ツール」の開発:慣用表現およびコロケーション等、連語への対応が可能な形のシステム開発を行った。その際、連語が活用語で終わる場合にも対応可能な仕組みを整えた。システムは適宜運用実験を行い、問題点の洗い出しを行い、システムの改良を行った。 c.頻度の高い慣用表現の抽出:BCCWJに加えて新聞コーパスを活用し、使用頻度の高い慣用表現を抽出した。得られたデータを書き換えリストに加えることによって、慣用表現によって生じる意味の異なりへの対応が可能になる。 d.成果の中間報告と協力依頼:日本のみならずインドネシアで行われた国際会議にも参加し、研究成果を報告するとともに、学会および国際会議参加の日本語教育関係者に運用実験への協力を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多義語の意味の特定に関して、研究当初はシソーラスとして分類語彙表を活用することを視野に入れていたが、分類語彙表の項目分けを利用した自動的な意味の特定はうまく機能しないことが判明した。そのため、慣用表現およびコロケーションをもとに汎用性の高いシステムの研究を継続することにした。28年度は使用頻度の高い慣用表現およびサ変動詞の抽出を行い、これをもとに書き換えリストの整備を進めることにした。
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今後の研究の推進方策 |
使用頻度の高い慣用表現リストをもとに、やさしい日本語への書き換えリストの整備を継続する。また、「する」を伴って用いられているサ変動詞と名詞の組み合わせにも着目し、BCCWJおよび新聞コーパスを活用して高頻度に用いられるサ変動詞のうち多義のものについて意味の特定をコロケーションによって行うことにする。名詞とサ変動詞の組み合わせを中心にリスト化を進め、これらの成果を組み入れた書き換えリストを完成させる。得られたリストを「意味特定ツール」と組み合わせることによって、多義語の意味の特定が可能なシステムの完成を目指す。一方、システムの運用実験に関しては、日本語母語話者および非母語話者による運用実験を経て、有用な支援ツールに仕上げる。
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