研究課題/領域番号 |
15H03235
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
山下 麻衣 京都産業大学, 経営学部, 教授 (90387994)
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研究分担者 |
大谷 誠 同志社大学, 人文科学研究所, 研究員 (10536105)
今城 徹 (今城徹) 阪南大学, 経済学部, 准教授 (20453988)
藤原 哲也 福井大学, 医学部, 教授 (30362338)
長廣 利崇 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (60432598)
鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80296730)
中野 智世 成城大学, 文芸学部, 准教授 (90454470)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 戦争と障害 / 障害者対策の歴史 / 戦傷病者対策の歴史 |
研究実績の概要 |
平成27年度は「基盤形成期」と位置づけ、国際学会での報告、定期研究会の開催、各研究者による史料収集を行う年度となった。 まず、国際学会での報告については、研究代表者である山下、分担者である藤原、今城が、イギリスのSOAS(University of London)で開催されたBritish Association for Japanese Studies主催の学会に出席し、日本赤十字社の活動(山下)、傷痍軍人の処遇(藤原)、恩給制度の発展史(今城)を報告する機会を持った。 次に、定期研究会については、第1に、戦争と障害の研究を推進していくため、日本、イギリス、ドイツで総力戦体制がどのように研究上で分析されているのかを、文献紹介とともに検討する会合を持った(2015年5月10日、同志社大学)。第2に、当事者としての障害者が歴史研究でどのように分析されているのかを学ぶために、愛知県立大学の橋本明氏を招聘し、私宅監置と日本の精神医療史に関する報告をしていただいた(2015年12月6日、同志社大学)。第3に、平成28年度の研究をどのように推進していくのかを検討するために、平成27年度に収集した史料を紹介し、かつ、どのような方法論で研究を進めていくのかに関する情報共有をおこなう場を設けた(2016年3月22日、阪南大学あべのハルカス)。 さらに、史料収集については、研究代表者および研究分担者が申請書に記載したテーマにあわせて、主にしょうけい館、国立公文書館、福岡県共同文書館(日本)、National Institute od Health National Library of Medicine(アメリカ合衆国)、ベルリン国立図書館(ドイツ)、Wellcome Library(イギリス)などに赴き、研究推進に要する史料収集にあたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、申請時に予定されていた年次よりは1年前倒しで、SOASのJapan Forumで、戦争と障害に関する学会報告をした。山下、藤原、今城が、日本を対象国とした赤十字社の歴史、第二次世界大戦直後の傷痍軍人の生活実態に関する調査、恩給制度の歴史を報告した。結果、フロアからは、これら制度や実態がその当時の世界の政治や経済の動向とどのようにリンクしているのかを明らかにすること、そして、日本はどの国の制度を参考にしていたのかを知りたい、というコメントが寄せられた。それぞれの報告者はこの学会報告の結果得た知見を参考にしながら、平成28年度以降の研究を進めていき、投稿論文として形にするべく、努める。 2015年5月の研究会では、総力戦体制が歴史研究でどのように分析されているのかを、日本、ドイツ、イギリス、アメリカ合衆国それぞれで比較し学ぶ機会を持った。この研究会では、近代に起こった戦争のうち、どの戦争がより一国のシステムを変えるほどのインパクトを持っていたのかという問いに対する「解」が、対象国や研究者にとって異なっていることを体系的に学び得た。この知見は、今後、それぞれが戦争と障害というテーマに向き合う前提としての知識という意味で、確実に役立つ。 2015年12月の研究会では、橋本明氏の報告をとおして、収集が難しく、また、たとえ収集が実現としたとしてもその使用により細心の注意を要するという障害を取り扱った史料群を用いる際に、障害の歴史研究の推進はどのように進められるべきかということに関する大きなヒントを得た。またこれら研究を研究者だけにとどまらず広く社会に発信していくための方法論についても深く学び得る機会となった。 2016年3月の研究会では、平成28年度以降に向けての研究の進捗計画を確認しうる機会を持てた。こちらで共有した方向性を元に、今後、研究を計画的に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、申請書にあるとおり、定期研究会の開催と個別の学会報告の実施に中心がおかれる。 第1に、定期研究会の開催については、9月、11月、3月に研究会をおこなう予定である。この場では順番に研究代表者および研究分担者が研究報告を実施する。具体的には日本赤十字社の救護看護婦供給構造の歴史(山下)、戦争障害者の就労支援の歴史(中野)、連邦政府の戦傷病者の雇用対策(藤原)、コミュニティーケアと当事者団体(大谷)、戦争神経症の歴史(鈴木)、鉄道公傷者の歴史(長廣)、戦時日本における傷痍軍人の生活(今城)を現時点では報告予定である。 第2に、招聘予定のChristopher Gerteis氏は平成28年度サヴァティカル取得のため、イギリスではなく東京に滞在予定であるため、同氏と密にコンタクトをとりつつ、Japan Forumへの投稿論文掲載に向けた学術的な意見交換を行うことにしている。 第3に、平成27年度に山下と今城は海外での研究報告をおこなった関係で、両者の新たな学会報告の期日は平成29年度以降に変更する。 第4に、新たな研究報告の機会として、平成28年4月に、研究代表者の山下が、長廣、大谷、藤原とパネルを組織し、障害の歴史に関する報告を経営史学会関西部会で行う。同学会では、部落史研究者である京都産業大学文化学部教授の灘本昌久氏にもコメンテーターとして加わっていただく。 第5に、平成29年度の学会報告に向けて、西洋諸国を対象とする中野、藤原、大谷がエントリーに向けた研究のとりまとめをおこなう予定である。
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