研究課題/領域番号 |
15H03244
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
成田 龍一 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (60189214)
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研究分担者 |
竹内 栄美子 明治大学, 文学部, 専任教授 (00236415)
鈴木 勝雄 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 主任研究員 (30321558)
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
丸川 哲史 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50337903)
黒川 みどり 静岡大学, 教育学部, 教授 (60283321)
坪井 秀人 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90197757)
島村 輝 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (90216078)
戸邉 秀明 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (90366998)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本史 / 近現代史 / 文化史 / 高度成長 |
研究実績の概要 |
高度成長文化研究会を定期的に開催し、各自の成果を共有した。7月21日に、佐藤泉『1950年代、批評の政治学』をめぐり、9月16日には、小川幸司(長野県教育委員会)を招き、主著『世界史との対話』全3冊をめぐる討議をし、教育をめぐる議論が、大きな軸となることを確認した。また、2019年3月8日には、逆井聰人『<焼跡>の戦後空間論』をめぐり討議し、高度成長期における社会について、共通認識を高めた。 こうした研究活動の成果は、国際的な研究集会において還元した。6月8日~11日まで、ワシントン州シアトルのワシントン大学の国際ワークショップ「トランスパシフィック ワークショップ」に、研究代表者の成田龍一、研究分担者・渡辺直紀、坪井秀人のほか、岩崎稔らが参加、報告した。また、成田と岩崎、坪井は8月21日~28日まで、オランダのライデン大学での国際シンポジウム「複数の68年」に参加し、アメリカ、イギリスなどの研究者と議論した。さらに、12月6日~11日には、パリでキャロル・グラック教授(コロンビア大学)の主催する会議「維新150年と「68年」50年」に、成田、渡辺、坪井、岩崎らが参加し、報告した。この会議には、フランスのみならず、ドイツ、オランダからの参加者もあった。 そのほか、成田は、日本史研究会大会(10月14日、佛教大学)でコメントを行い、大佛次郎記念館(11月24日)、松本清張研究会大会(12月1日)で講演を行い、成果を還元した。また、日本社会文学会秋季大会(沖縄国際大学、11月10-11日)、および3月4日(静岡、静岡大学比較文学研究会)に「演劇と文学」をめぐる催しに参加した。 各自が出版活動をおこない、随時、高度成長の思想史に関する成果を、着実に公表している。史料収集と整理に関しても、文献史料とあわせ、本研究で重要な大衆文化にかかわる資料も、DVDをはじめ順調に収集され前進している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
定期的な研究会・高度成長文化研究会が年3回のペースで開催されているが、この研究会が他の科研と合同の研究会、およびサブの研究会(「戦後史学史と文学史の会」。これまでに5回開催)をおこなうにいたり、研究成果の共有がいっそう広汎になされるようになった。また、アメリカの研究者と共同のワークショップ、シンポジウムも定着しているほか、今年度は、オランダ・ライデン大学に、研究代表者の成田龍一と研究分担者の坪井秀人が参加・報告し、研究成果をより広く還元することをおこなった。さらに、9月13日―15日に、早稲田大学が主催した日韓国際シンポジウム「記憶の政治学」に、成田、渡辺直紀がコメンテーター、司会者として参加、協力した。この国際シンポジウムは、韓国の研究者が加わっており、本科研の目的のひとつである東アジアの射程での考察が着実に進んでいる。本年度は、韓国で開かれることが決定している。 また、高度成長の歴史的な把握について、中学校・高等学校の教員たちの依頼を受け、成田が講演し、あるいは歴史教科書の記述の推移について分析・報告をした。これも成果の還元である。高度成長文化研究会で、小川幸司を招き討論したのもこの流れにある。成田は、通史を著し、歴史学と歴史教育の架橋を試みた。さらに、各自が出版・執筆活動をおこない、成果をさまざまな機会に公表していることも、本科研の活動を活発にしている。戦後思想史のなかで手薄であった、高度成長期の思想史に貢献すべく、歴史学、文学史の領域で成果を着実に公表している。研究分担者・黒川みどりは、竹内好を継続して追究し、竹内栄美子は堀田善衛に焦点を当てている。他方、大衆文化にかかわる資料も、DVDをはじめ順調に収集され前進している。映像分析を手法とした(映画を主要な対象とした)、国際シンポジウムの開催をアメリカ側に提案し、準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度に当たるため、総括のシンポジウムを行うべく、準備を進めている。高度経済成長期の社会構想を検討する本研究の総括として、高度経済成長が検討された、いくつかの時期に焦点を当てて、そこでの社会構想を集中的に議論する。高度成長文化研究会では、すでに総括シンポジウムに向けた予定を組んでいる。また、国内での研究会、および国外での研究活動・研究集会を、いっそう充実させる。こうした総括シンポジウムの準備とともに、成果の還元を目的としたアメリカの研究者との国際シンポジウム、国際ワークショップも、より緻密に推進する。春の「トランスパシフィック ワークショップ」(本年度は、会場を再び、UCLAとする)、秋の韓国での国際シンポジウムの充実も図る。これまでネットワークを形成してきたアメリカにとどまらず、積極的に東アジアの研究者とも交流を深めていきたい。 さらに、研究代表者・研究分担者が核となり、主要メンバーが継続的に参加し、テーマに応じて、あらたなメンバーの参加を求めた研究会が「戦後史学史と文学史の会」として発足した。このように、研究代表者・研究分担者がさらに独自に活動することも図りたい。そうした試みの一端として、合同の研究合宿のような形式を考え、実践する手筈となっている(研究分担者の坪井が主宰)。加えて、研究代表者、および研究分担者がそれぞれの領域において、論文の執筆、さらには出版事業にかかわっている。そこでの活動を、総括シンポジウムに還流することを図りたい。合評会はそのひとつの実践であり、互いに多くの刺激を得るとともに、成果が直接に共有される。すでに合評会は多く行ってきているが、今後も積極的に推進していきたい。昨年度から課題とした歴史教育との関係は、いっそう深めていきたい。あわせて研究代表者および研究分担者が、成果を公表することを、本年度も推進する。
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