研究課題/領域番号 |
15H03247
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研究機関 | 公益社団法人部落問題研究所 |
研究代表者 |
藤本 清二郎 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (40127428)
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研究分担者 |
竹永 三男 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (90144683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 行き倒れ / 非人・乞食 / 社会的弱者 / 移動する弱者 / 近世史 / 近現代史 / 国際比較史 / 地域史 |
研究実績の概要 |
歴史学・経済学・社会福祉学・法学(法制史)研究者なども含む12名からなる研究組織を構成し、近世から戦後現段階を通して、また日本と中国・イギリス・アメリカ等との比較による共同研究を開始した。 第一に、研究例会は、2015年6月6日(参加者7名)、8月1日(参加者9名)、11月13日・14日(参加者8名)、2016年3月7日(参加者14名)の4回開催した。これらの研究報告では、研究分担者・連携研究者・研究協力者が合計7報の報告を行った。その分野は、日本史4(19~20世紀)、イギリス史1(17~19世紀)、中国史2(17~20世紀)で、歴史学(社会史)、経済学、法学(法制史)と幅広い時代・分野の、有益な国際比較史、かつ地域史の方法による報告と討論がなされた。参加者は各回7~14名であった。これらの報告と討論により、「行き倒れ」の発生の世界的な普遍性とその対応の各国、各時代の固有性が確認され、現在のところ方法の有効性が共通認識となった。 なおこの内、6月例会では研究計画の具体化(年間計画、史料調査・図書購入計画等)について検討した。11月1日の部落問題研究所主催「部落問題研究者全国集会」歴史分科会Ⅰ・Ⅱを関連研究会と位置づけて近世と近現代両グループに分かれて出席し、共同研究推進の観点から議論に参加した。11月13日には例会に合わせて、中世の非人・遊行者の実態を活写した「国宝一遍聖絵」全巻特別展示(遊行寺宝物館)の見学、大東文化大学大河内文庫の見学会を開催した。 第二に、史料収集については、日本近代初期の「行き倒れ」研究の有力事例となる長崎県庁文書を写真撮影し、また近世畿内地域の非人番文書の写真デジタルデータを入手し、それぞれ解読を進めた(解読入力作業はいずれも全体の約7割が完了)。県庁文書を次年度研究報告の共通史料とした。非人番文書は個別研究の対象史料となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、交付決定を承けて、年間研究計画を具体化し、研究例会の開催を軸とする共同研究基本計画を確認した。 第二に、研究例会を、5回開催し、延べ7人が報告した。その内容は、日本の行き倒れについては、近世(四国遍路の行き倒れとその救護)・近現代(日露戦後の福島県における子連れ女性・妊産婦の行き倒れ)、行き倒れに関連する救貧法制・社会的救貧活動の国際比較については、18~20世紀清代北京の救貧事業と17~19世紀イギリスの救貧法制、行き倒れと通底する日本近代の社会問題については、足尾鉱毒事件と貧困問題および明治初年の長崎県の棄児の実態であり、総じて、本研究の方法的見地である「国際的比較地域史」の具体的展開を図った。 第三に、本研究に関連する研究を進めている5人の研究者、日本近世(森下徹、沢山美果子)、幕末維新期(J.Porter)、中国清代(村上正和)、植民地期朝鮮(金津日出美)が研究協力者として参加し、研究報告・助言を得て本研究の課題達成を確実にするための、研究組織の充実を図った。 第四に、日本近世の非人番および近代の長崎県の行き倒れと行政措置に関する史料を撮影等で入手し、解読を進めた。この中、後者の長崎歴史文化博物館所蔵長崎県庁文書中の棄児・行旅病人関係文書群は、全国的な行旅病人関係文書の中でも類例の稀少な簿冊であり、本研究の主題に直接関わる貴重な公文書である。これらの文書群は2016年度の共同研究実施の一つの核となる共通史料となった。またイングランドの史料収集も連携研究者による訪英調査によって実施し、当該分野の研究深化が見通された。さらに、本研究の主題に関する近世都市史料、近現代都市貧困政策に関する報告書を購入して研究資料の充実を図った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に研究協力者として参加を得た5名(村上正和・森下徹・沢山美果子・金津日出美・J.Porter)を新たに連携研究者に加えて研究体制の充実を図り、以下の研究を進める。また研究例会は年6回、原則隔月に開催する。 第一に、前近代・近現代を通した「行き倒れ」研究の推進:①『道頓堀非人関係文書』による近世都市大坂の「行き倒れ」と非人の検討(塚田孝)、②紀伊・和泉・摂津の藩領(藤本清二郎)、城下町萩(森下徹)の乞食・「行き倒れ」の分析、③徳島藩領の四国遍路の「行き倒れ」の分析(町田哲)、④岡山藩領の捨子・「行き倒れ」の分析(沢山美果子)、⑤東京府・秋田県・長崎県の「行き倒れ」対応法制・行政の分析(竹永三男)をそれぞれ行う。 第二に、「行き倒れ」と移動する弱者をめぐる学際的研究の推進:①ハンセン病者・「精神病者」の実態と救護法制・地域社会の対応システム(廣川和花)、②近代の大阪府南王子村の相互扶助機能の分析(西尾泰広)、③長崎県の棄児・間引等の研究(茂木陽一)、④沖縄県から本土への移動者の検討(櫻澤誠)、⑤近代大阪の「行き倒れ」救護行政等の分析(飯田直樹)、⑥大都市と農村の貧困の産業革命期と戦間期との比較(大杉由香)、⑦戦前・戦後の行旅死亡人に関する社会福祉法制・行政の分析(鈴木忠義)をそれぞれ進める。 第三に、国際比較史研究、海外史料調査、海外在住研究協力者との共同研究の推進:①イングランドの行旅死亡人に関するロンドンでの収集史料の分析(小室輝久)、②アメリカにおけるハンセン病者・「精神病者」処遇・対応の分析(廣川和花)、③清代中国の刑政と救貧行政の分析(村上正和)、④植民地期朝鮮の「行き倒れ」対応行政の基礎的検討(金津日出美)をそれぞれ進める。⑤研究協力者として報告を得るため、D.Botsman(イェール大学)、M.Ehlers(ノースカロライナ大学)両氏を招聘する。
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