本研究は、インドを対象とするGIS(地理情報システム)インフラをインドの都市部まで拡大して整備し、それを基礎として植民地都市と地方都市に関する18世紀以降の形成過程を実証的に解明することを目的とした。 この目的に沿って、南インド諸都市のGISベース・マップを入手し、それらの都市内の全地名データを抽出して整備し、ウェッブ上のインド地名検索システムであるIndia Place Finderに提供した。次に、英国図書館で18世紀以来のマドラス税務局報告を中心とした史料調査を行い、総計数千枚にわたる写真撮影を行い、印刷・整理し、GISに組み込んだ。マドラスに関しては、同地の各種地図、国勢調査報告などを元に19世紀以来の基本GISベース・マップを数種作成し、統計とリンクさせ、カーンチープラムに関しては、南インドの綿業構造・宗教活動の中に同地を位置づける作業をし、コインバトゥールに関しては、南インドの製造業の発展と同地の企業活動に関する情報をGISに結びつけると共に、同地での資料調査で発見した1920-30年代の大量の日記類をデジタル化し、ウェッブ上に載せる処理をした。 これらの作業を基礎にした最終的な成果は、成果報告書として提出する予定であるが、第1の成果は、インドの都市研究の基礎となるGISインフラを革新的に整備したことであり、第2は、それによって、各都市の形成過程についての各種地図、統計、記述情報の統合が図られたことであり、第3は、それらによって、貿易都市、宗教都市、工業都市の具体的な形成過程が明らかになったことである。 なお、これらの作業やそれによる分析結果について、研究代表者、研究協力者は、オランダの国際社会史研究所、シンガポールのアジア世界史会議、京都の国際経済史学会、デリーのインド歴史協議会、同じくジャワハルラルネルー大学などの海外の学会・研究機関、および国内の学会・研究会などで報告した。
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