研究課題
本研究は、東アジアを経て日本列島に現生人類が最初に到達したルートとして有力視されている南回りルートに所在する後期更新世遺跡出土資料等の考古学的データの分析を通して、その妥当性を具体的かつ実態的に検証することを目的としている。アフリカを脱した現生人類が列島に到達したのは後期旧石器時代開始期(40,000年前)であるが、その主要なふたつのルートのうち、アジア大陸中央部を通る北回りルートに比べて、大陸南縁部を通過する南回りルートに関する考古学的研究は極めて少ない。本研究の主要な研究方法は以下の通りである。1)実見・観察・記録化および資料集成等を通して遺跡出土石器類の具体的な製作・運用技術構造分析を行い、2)現状では著しく不足している年代測定を実施し、遺跡現地踏査による地質編年の確定を通して資料の時間軸を整備する。3)民族考古学・生態考古学等に関する先行研究や研究代表者等の既存研究例、気候・環境データ等との比較・総合によって得られた、環境生態の異なる南アジア・東南アジア等の南回りルートにおける先史人類の行動戦略モデルを構築する。そのため、研究開始初年度に当たる本年度は、4月に研究打ち合わせ会議を開催し、先行研究・文献資料データベースの作成に着手した。対象地域の現地調査として、本年度は海外研究協力者の協力により、インド南部・スリランカにおける現地調査を重点的に実施した(10月および12~1月)。ジュワラプーラム遺跡群・バタトンバレナ・ファヒエンレナ・キタルガラベリレナの各洞窟遺跡等の現地踏査、石器資料の実見・観察・記録化、現地露頭におけるOSL年代測定サンプルの採取等を実施した。また韓国および国内(北海道・東北・中国)での比較資料調査を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
研究対象としている南アジア・東南アジアには、旧石器時代研究者が少なく、しかも研究環境・伝統によって資料調査の自由度や公開度に制限があることが一般的であるが、本年度の調査ではインドの海外研究協力者の裁量により、未公表資料も含めて十分な資料調査を実施することができた。データベース作成も順調に進行しており、英語文献が主体となるインド・スリランカにおいては、ほぼ終了している。
研究第2年目に当たる平成28年度は、27年度の研究方法を継続し、資料の蓄積とその分析に努める。27年度末に予定していた研究集会を、海外研究協力者を招聘して6月に実施する。合わせて海外研究協力者が提供した遺跡出土有機質資料を使って14C年代測定と食性分析を実施する。27年度現地調査で取得したサンブルのOSL年代測定を実施する。データベース作成作業を継続し、東南アジア・オセアニアに範囲を広げる計画である。また海外現地調査では、マレーシアとパキスタン・台湾を予定する。
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