研究実績の概要 |
本研究は、東アジアを経て日本列島に現生人類が到達したルートとして有力視されているアジア南周りルートに所在する、後期更新世遺跡出土の資料等の考古学的データの分析を通して、その妥当性を具体的かつ実態的に検証することを目的としている。アフリカを脱した現生人類が列島に本格的に到達したのは後期旧石器時代開始期(約40,000年前)であるが、その主要な二つのルートのうち、アジア大陸中央部を通る北回りルートに比べて、大陸南縁部を通過する南周りルートに関する考古学的研究はきわめて少ない。 本研究の主要な研究方法は、以下の通りである。1)実見・観察・記録化および資料集成等を通じて、遺跡出土石器類の具体的な製作・運用技術構造分析を行い、2)現状では著しく不足している年代測定を実施し、遺跡現地踏査による地質編年の確定を通して資料の時間軸を整備する。3)民族考古学・生態考古学等に関する先行研究や代表者等の既存研究例、気候・環境データ等との比較・総合によって得られた、環境生態の異なる南アジア・東南アジア等の南周りルートにおける先史人類の行動戦略モデルを構築する。 研究最終年度にあたる平成30年度は、4月にカザフスタンにて現地・資料調査を行い、7月にマレーシア、8月にロシアで現地調査と研究成果の発表(国際会議)を行った。なお平成29年度に実施予定であったインドの現地調査は現地での調整に時間を要し、繰越手続きの上平成30年7月に実施した。10月に日本考古学協会静岡大会(公開講演)と、韓国旧石器学会定期学術大会(招待講演)で、これまでの研究成果の発表を行った。また国内(名古屋大学等)での比較資料調査を行い、調査資料の分析とデータベースの作成を完成させた。
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