研究課題
今年度は、昨年度に引き続き、脂質分析の技術開発、日本列島産食材のデータ収集、遺跡出土資料の分析という三本柱の研究を進めた。東京大学総合研究博物館に設置された分子レベル安定同位体分析を行う質量分析計システムは、考古・文化財資料に特化した、国内で唯一のシステムであるが、今年度はシステムのメンテナンスに多くの時間が割かれた。GC-C(ガスクロマトグラフ-燃焼炉)を安定的に運用する上で、いくつかの障害が生じた。土器胎土・土器付着炭化物・食材原料などから脂質を抽出し、GC-MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)で、有機化合物を同定、定量する作業は、滞りなく進んだが、分子レベル炭素同位体分析、特にパルミチン酸とステアリン酸の炭素同位体比によって、食材グループを推定する作業に支障が生じた。このため、食材データベースの構築を後回しにして、遺跡出土資料の分析を最優先して進めた。有機物の抽出法は、昨年度に採用した少量試料法を主として用い、必要に応じて、総脂質抽出法を用いて、測定前の前処理時間を短縮した。列島の遺跡から出土した土器の分析を進めた。昨年度から継続して分析している石川県真脇遺跡、八日市地方遺跡、群馬県居家以岩陰遺跡、北海道江別市対雁2遺跡、千歳市イカベツ2遺跡に加え、阿賀野市土橋北遺跡、春日部市神明貝塚などから出土した土器片、土器付着炭化物の分析を行った。遺跡出土の糞石や列島と韓国の灯明皿について分析し、興味深い分析結果を得た。また、中国の田螺山遺跡、跨湖橋遺跡、良渚遺跡・新峡遺跡などで入手した資料について分析を行った。さらに、新学術領域研究「パレオアジア文化史学」と連携し、ギョイテペ遺跡(アゼルバイジャン)、テル・セクル・アル・アヘイマル遺跡(シリア・アラブ共和国)、テル・サラサート2号丘出土遺跡(イラク共和国)の試料にも着手している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Quaternary Int.
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